2012年09月17日

ガーナ共和国 Ghana


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みなさんは、ガーナと聞くと何を連想しますか?
おそらく、圧倒的に「チョコレート」と
答える人が多いのではないでしょうか。

しかし、ガーナにはそれだけでなく、
沢山の特産物や観光地が存在しています。
また、皆さんが普段意識する機会のあまりない
国が抱える問題や、日本との結びつきがあります。

この記事を読むことで、
ガーナのあらゆる表情を知ってもらえればと思います。


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ガーナ共和国、通称ガーナは西アフリカの赤道よりやや北にある国です。
面積は日本の3分の2程度で、日本の本州と同じくらいになります。

人口は約2000万人で、日本の5分の1程度です。
公用語には英語と複数の民族語が使われています。
宗教は半数がキリスト教、約15%がイスラム教、
残りはガーナの伝統宗教にわかれます。
首都はアクラです。


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これはガーナの国旗です。
実は、国旗のこの3色にはそれぞれ
ガーナをあらわす重要な意味が込められています。

赤…独立するために戦いで流した血

黄…金(鉱山物)

緑…豊かな農耕地の森林

また、中央の黒い星はアフリカ独立運動の父と呼ばれた
ガーナ共和国・初代大統領エンクルマをあらわしています。


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(エンクルマの銅像)


では、まずはそれぞれのカラーについて、
歴史・政治・経済の話もまじえ、話していくことにしましょう。

■ガーナの黄色・金・歴史■
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18世紀頃、現ガーナの内陸部のほとんどの地域は
アシャンティ族によって、アシャンティ王国として支配されていました。
この民族が諸王国を取り込み、
ここまで繁栄した理由は「金」にあります。
まさしく、ガーナ国旗の黄色を象徴する金です。
ガーナの、特にアシャンティ王国では
昔から鉱山物の金が多くとれたのです。


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アシャンティ王国はヨーロッパ人との交易で、
その金と引き換えにあらゆる輸入品(最新型の武器など)
を得ることで力をつけていったのです。

また、交易のためにヨーロッパ諸国は
アフリカ諸国ギニア湾周辺にエルミナ城を最初とし
拠点となる城塞や要塞をいくつもつくりました。
その沿岸一帯は金の産出地ということから、
「ゴールド・コースト」または「黄金海岸」と呼ばれていたほどです。


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(エルミナ城)


しかし、この交易による繁栄の裏では、
歴史上でとても有名で悲しい犠牲がありました。
「奴隷貿易」です。
金と共に奴隷(肉体労働者)も貿易の品として輸出していたのです。
奴隷となる人は、ガーナの人たちです。
ガーナの一部の人が、自分たちの富のために、
同じ国の人びとをヨーロッパに売っていたのです。

この悲しい事実は、ガーナについて知る上でとても重要であり、
忘れてはならない歴史なのではないかと筆者は思います。



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この、奴隷貿易の拠点ともなった
エルミナ城とケープ・コースト城は
1979年に世界文化遺産に登録され、「負の世界遺産」として
現在では多くの観光客が足を運ぶ場所となっており、
ガーナの経済基盤の一つにもなっています。


■ガーナの赤・独立で流した血・政治■
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さて、長く続いた奴隷貿易ですが19世紀後半には
終わりを迎えることになります。
イギリスがゴールド・コーストを植民地とし、
交易相手ではなく侵略者となったのです。

また、アシャンティ王国をも
イギリス領ゴールド・コーストに編入してしまいました。

国旗の赤色は「独立するために戦いで流した血」と説明した通り
1957年まで、ガーナはイギリスに支配されることとなったのです。
国旗の赤色は、そのイギリスから独立する時に
人々が流した血の色を現しているのです。


■ガーナの緑・豊かな農耕地の森林・経済■
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ガーナにとって、主要産業は農業と鉱業です。
特に農業(カカオ豆)はGDP(国内総生産)の約30%、
雇用の約60%を占めるものです。(2012年現在)

また、木材も多く輸出されており、先にあげた金を含めたこの3つが
主要輸出品の上位3位をしめています。


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まさしく、国旗の緑はこれら、国を支える主要産業である
「農耕地の緑」を現したものなのです。

しかし、これらに依存した産業形態が問題視されています。
なぜなら、カカオ豆・木材・金は
すべて第一次産業(自然の恩恵を利用した産業)なので、
天候や世界の市場価格にガーナ経済は影響されやすく、
もろい経済構造と言えるからです。
また、第一次産業への依存は、産業の発達の遅れにも繋がっています。



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ではここからは、そんな開発課題と共に
ガーナが抱えているあらゆる問題をあげていきましょう。

「あなたの大切なものは何ですか?」

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「新しい車です」

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ガーナの産業が第一産業に依存し、また、産業の発展が遅れている理由に
経済インフラ(運輸交通・電力)の未整備があげられます。
ガーナの国内運輸は95%を道路に依存しているにもかかわらず(2012年現在)
その道路の整備がきちんとなされていないことが問題視されているのです。

また、このことは地方の町や村の生活基盤を支える上でも
重要な問題になっています。
道路網の未整備が、ガーナの地域格差を生んでいる要因の
1つと言われています。


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そこでJICA(日本政府の国際協力機構)は、
NPO法人・民間企業と協力して、道路網整備のノウハウを
現地の人々に教える為の準備をしています。

その1つが、NPO法人道普請人(みちぶしんびと)が提案した
「日本発「土のう」による農村道路整備ビジネス」です。
これは、他のアフリカの国でも既に成功例のある、
土のうを活用する、日本が開発した画期的な方法を教えるものです。


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コンクリートで整備するのに比べ、ずっと低コストであること、
住民自らが行える作業であることから、
住民に労働(収入)を与えることができること、
全天候型ということで雨季のぬかるみ対策にもなること、
整備した部位が破損してしまっても
住民自身で修理できるため、持続可能であること、
これら多くの利点から、実施が望まれています。


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また、車は日本とガーナをつなげる重要なキーワードでもあります。
現在、日本がガーナに輸出しているものの第1位が車であり、
ガーナで乗られている車の多くが
日本のTOYOTA社製であるという現状があるからです。



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「あなたの大切なものは何ですか?」

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「電気と学校の制服です。
電気があれば夜、おうちでも勉強ができるし、
明るいと、幸せな気持ちになります。」

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運輸交通と共に、ガーナの産業を支える上で重要となってくるものが電力です。
ガーナ南東部には「アコソンボダム」という水力発電用の巨大なダムがあります。
このダムを作るためにせき止められたヴォルタ湖が、
人工湖として世界最大級の大きさを持つほどです。
また、このダムがガーナの総発電量の6割をまかなっています。


「あなたの大切なものは何ですか?」

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「飲み水です。
水は生きていく上でとても大切なものです。」

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しかしそれにもかかわらず
ガーナは電力不足による停電に悩まされています。
なぜなら、乾季になると水量が減少し、発電量が足らなくなるのです。
その上、ガーナは電力を近隣諸国に売ることで外貨収入を
得ているため、海外への電力流出によるところも大きいと言われています。

また、地方の世帯電化率は約20%(2007年度時点)
と大変低いため、都市部と地方の格差の是正も求められています。
産業・経済への打撃が大きい電力。
この整備が今、ガーナでは急務となっているのです。


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そこで、2020年までに500人以上の集落のすべてに、
安定した電力を供給するという目標を掲げたガーナ政府に対し、
日本のODA(政府開発援助)では「地方電化計画」として
目標実現に必要な資金を、無償資金協力という形で提供してきました。



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次は、ガーナというとこの問題を連想する人も多いでしょう。
労働に関する問題です。

「あなたの大切なものはなんですか?」

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「カカオの種子の部分です」

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農業の中でも、大部分を占める輸出物は、先にあげたとおり
チョコレートの原材料となる「カカオ豆」です。
全世界でも、1位のコートジボワールに次いで2位の生産量です。

また、日本で消費されているチョコレートの約70%は
ガーナから輸入されているカカオ豆により作られています。

しかし、この日本に大きなかかわりのあるカカオ豆。
この生産には深刻な問題を抱えていると言われています。
「児童労働」です。


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まず、みなさんは児童労働とは何かご存知ですか?
児童労働とは、国際労働機関(ILO)の「国連こどもの権利条約」の定義によれば
以下の通りとされています。

<ILOの児童労働の定義>
1、13歳(途上国では12歳)未満の子どもは、
「軽易な作業」でも、「児童労働」に含まれるので、させてはならない

2、15歳(義務教育終了年齢を下回る年齢)未満の子どもが、
「通常の仕事」をする場合、「児童労働」に含まれるので、させてはならない

3、18歳未満の子どもが、
「危険な労働」をする場合、「児童労働」に含まれるので、させてはならない

※ポイントは、年齢によっては、ある程度までの労働はしても良い、
ということです。


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これに基づき、ガーナの国内法では児童労働が禁止されています。
しかしながら、ILOによると、ガーナの15歳未満の子どもの25%が、
経済的活動(仕事)をしているという調査結果が1996年に出ています。
(内、何パーセントがカカオ農家で働いているかは定かではありません)

これらをふまえ、カカオ農園での児童労働の実態を指摘する
NGO(非政府組織)、団体が世界中に多く存在します。
カカオ農園での子どもの作業は、大きな刃渡りの「なた」を使った下草刈りや
有害な農薬の散布が大半であり、危険有害労働に指定されているからです。

日本のNGO、ACE(エース)も
ガーナの児童労働問題について訴える冊子付きの
「しあわせを運ぶ てんとう虫チョコ」を販売し、その売上げの一部を
カカオ農園での児童労働撤廃活動に役立てています。


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しかしその一方で、ガーナのカカオ農園=児童労働のイメージを否定する声や
ガーナでの児童労働は「昔の話である」という現地の人々の声もあるといいます。

例えば、元アジア経済研究所研究員であり、
現・東京農業大学国際食料科情報学部教授である
高根務の編著『ガーナを知るための47章』(明石書店)によれば

・ガーナ人は教育熱心であり、子どもを積極的に学校に通わせている
・学校に行かない理由があるとするならば、労働ではなく貧困によるものが大きい
・「危険で有害な労働」に該当する農薬散布は、
政府の職員が全国で無償で行っている
・なたを使いこなすことや重い荷物を運ぶことは、日常生活で欠かせないことであり
これらすべてを禁止するのは現実的ではない

以上のような点をあげています。
(ただし、素手での農薬散布や親元から離しての強制労働は禁止すべきとしている)


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これらの情報を元に考えた筆者の意見としては、
子ども本人とその親や現地の人々にとって、
児童労働という意識がなかったとしても、
労働という実態が少なからず存在しているのは、本当だと思います。

またそれが貧困によるものであるならば、
ガーナ産のカカオ豆をを多く消費する日本人として、
それを改善する手立てを意識しつづける必要があるのではないかと思います。

本当の意味で、「ガーナ=児童労働」というイメージを解消するためにも。



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「あなたの大切なものは何ですか?」

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「勉強することができる学校です」

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次に、ガーナの教育問題について書いていこうと思います。
児童労働の問題にも大きく関係していると言われる
就学率と識字率の状況はどうでしょうか?

成人(15歳以上)識字率:66.6%(2009年)
初等教育就学率:75.9%(2009年)

実はガーナは、ほかのアフリカ諸国よりは
教育レベルが比較的高い国です。


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(アコソンボの学校)


しかしながら、以前として3割近い子どもたちが
満足に小学校に通えていないのも、また事実です。

この理由の第一としては、やはり貧困です。
家庭が貧困であると、子どもも、大人のように生活費(主に食費)を
稼ぐために、働かなければならなりません。
また、近くに学校がない、あるいは学校に行くための道路やバスがないため、
子どもたちは学校に行けないのです。


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そこで、日本在住のガーナ人が設立したNGO「マンフィーと青年基金」では、
ウコランザ村に身寄りのない子どもや、低所得家庭の子どもを中心にした
全寮制の小中学校の建設をおこなっています。(2014年完成予定)

この計画では、子どもを学校に行かせることで、その子が働いていた分の
収入が減るため、その分の収入を何とかしようとする試みも行っています。
その子の「親に」雇用のチャンスを提供するため、
学校の脇で共同農場の運営を行う予定です。
教育と同時に、貧困という根本的な問題を解決する取り組みが
行われようとしているのです。


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また、学校へ通えても中途退学してしまう子どもも多くいます。
貧困も理由の一つですが、教育環境が整っていないのも
大きな問題となっています。
学ぶための文房具や本、施設が不足しているのです。

そこで、チョコレート菓子で有名な
「ブラックサンダー」を販売している有楽製菓株式会社では
「ガーナにおける図書館建設プロジェクト」を
公益財団法人 プラン・ジャパンを通じて、取り組んでいます。


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ガーナの地方の村には、学校図書館を含め1つも図書館がない所も存在し、
子どもたちが本を読む習慣を身に着ける機会がないため
図書館を建設しようというプロジェクトです。
これにより、今後の識字率の上昇が期待されます。

また「ガーナミルクチョコレート」で有名なロッテでは、
チョコレート商品の売り上げの一部を
WFP(国連世界食糧計画)の行っている
「学校給食プログラム」に寄付し、支援しています。


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この学校給食プログラムとは、学校に通う世界の子どもたちに
給食を配給するというものです。
給食を配給することは、子どもの出席率(通学率)の向上、
授業を受ける際の集中力の上昇に重要な役割を果たしているとされています。



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次に、医療問題について書いていきたいと思います。

「あなたの大切なものは何ですか?」

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「看護師さんです。将来は
ママのような看護師さんになりたいです。」

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ガーナで深刻な問題となっているのは
妊産婦死亡率と、乳幼児及び5歳未満児の死亡率です。

<妊産婦死亡率>
日本:出生10万件あたり5人(2010年)
ガーナ:出生10万件あたり350人(2010年)

<乳児死亡率>(2011年)
日本:出生1千件あたり2人
ガーナ:出生1千件あたり52人

<5歳未満児死亡率>(2011年)
日本:出生1千件あたり人3人
ガーナ:出生1千件あたり78人


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この原因とされているのはやはり、
各地域における「基礎的保健サービスの不平等さ」です。

地方・農村部では、医療施設の不足、
人々の医療・保健に関する知識や意識の低さ、
医療従事者の能力の低さが都市部に比べいちじるしいのです。

そこで、日本のODAは無償資金協力のプロジェクトとして
「アッパーウエスト州地域保健施設整備計画」を進めています。
これは、ガーナでも特に開発が遅れているアッパーウエスト州において
先にあげた3つの問題を改善するために
日本が無償でガーナに資金提供をするものです。


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また、アフリカで感染者の多いHIV(エイズを発症させるウィルス)
も問題視されています。

<ガーナの成人(15歳〜49歳)の感染率> 
1.8%(2009年)

他のアフリカ諸国と比べれば、まだ感染率は高い方ではありませんが
1990年の感染率0.3%と比べると、その拡大力の深刻さがわかると思います。
しかしながら、人々のHIVに対する危機感は薄く
検査に対して消極的な傾向だといいます。

そこでJICAは、若者のHIV新規感染を防ぐため
予防に関する知識向上やコンドーム使用、
安全な性行動を促す活動に取り組んでいます。


「あなたの大切なものは何ですか?」

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「サッカーです。
ガーナのサッカーチーム、ブラックスターズが大好きです。」

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その中でも、少し変わった取り組みが
2010年のFIFAワールド・カップ南アフリカ大会の時にありました。
JICAとソニー株式会社のPPP(官民連携)です。

ワールドカップを、大きなソニーのスクリーンで放映したり(入場無料)
その会場でHIV検査やHIVについてのクイズ大会、
HIVに対する差別・偏見をなくすための劇など、
HIV予防啓発活動を組み合わせたイベントを実施したのです。

これは、ガーナで最も人気のあるスポーツである、サッカーの
一大イベントで行ったからこそ、より大きな成果を残したといえます。
(ちなみに、このワールド・カップで、
ガーナはアフリカ勢で唯一、ベスト8に残りました)
今後このようなPPPも、国際協力を行う上で
大事になっていくのではないかと筆者は思います。


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さて、ここまでガーナが抱えるあらゆる問題をあげてきましたが、
それらが持つ共通点は、どれも「都市と地方の貧困格差」
にあると言えるのではないでしょうか。

では、それらを改善する取り組みとしては
他にはどのようはものがあるのでしょうか?


「あなたの大切なものは何ですか?」

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「豊かな緑、そして木です」

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ガーナの特産物として、忘れてはならないもの、
それは「シアバター」、別名「神聖なる木」です。
シアバターとは、シアーバターノキの種子から作られ
食用や薬、石鹸やクリームなどに配合されている植物性脂肪です。
この輸出量が世界で最も多いのがガーナで、世界全体の約40%を占めています。

日本で有名な化粧品メーカーのロクシタンや、ザ・ボディショップの
ボディローションやボディクリームなど多くの商品にも、
シアバターが用いられており、知っている人も多いのではないでしょうか。


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(有名ブランドのシアバター)


この人気が高いシアバターを、ガーナで特に貧しい地域の産業支援のために
実施されたプロジェクトがあります。
UNDP(国際連合開発計画)が日本政府の支援を受けて2007年から2年間行った
「北部ガーナにおけるシアバター産業支援を通じた
現地女性のエンパワーメントと貧困削減」です。
(エンパワーメントとは、女性などの社会的弱者が、その地域で、
自分の能力を発揮できるようにすることを言います。)

このプロジェクトは、その名の通り貧困地域の女性の自立支援と
貧困の削減を目的としたものです。


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(フェアトレード商品のシアバター)

ガーナの北部地域では、女性のみが伝統的に触れることが許されている
シアバターが、女性たちの貴重な収入源であるため、
その生産を産業に発展させ、女性たちが持続的に
収入を得られるようにすることが狙いなのです。

UNDP以外にも、このシアバターを通じてガーナを支援する
企業や団体は多く存在しています。


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・・・



さて、ここでガーナと日本、両国にかかわる人物を二人紹介します。
ここまであげてきたガーナの問題解決にも大きくかかわる重要な人物です。
この二人を知ることで、あなたの中のガーナと日本の距離が
グンと近づくことでしょう。

世界で最も有名なガーナ人を、みなさんはご存じですか?
そう、元国際連合事務総長であり、国連を活性化させた
手腕などが評価されたノーベル平和賞受賞者、
コフィー・アナンです。


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(C)Ricardo Stuckert/ABr


彼は、1999年の世界経済フォーラムにおいて、
企業に対しとあるイニシアチブを提唱しました。
「グローバル・コンパクト(GC)」です。

これは、世界中の参加企業に対し、人権・労働・環境・腐敗防止の
10原則を実践することを求めているものです。
グローバル・コンパクトに参加している企業・団体は
2011年の段階で全世界で約6000社(132カ国)で
2012年現在、日本国内では(大企業を中心とした)155社にのぼっています。


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(C)www.kremlin.ru


この10原則の中には、「児童労働を実効的に廃止する」や
「雇用と職業に関する差別を撤廃する」なども含まれており
ガーナ産のカカオ豆を使ったチョコレートなど、
ガーナと大きなかかわりを持つ日本企業にとっても、
とても重要な内容が含まれているものではないでしょうか。

進んでグローバル・コンパクトに参加することが、これまであげてきた
ガーナの問題点克服への近道になるのではないかと筆者思います。
(しかしながら、現在「ガーナミルクチョコレート」を発売する日本の大企業ロッテ
をはじめとする今回紹介した企業は、グローバル・コンパクトに不参加であることが
筆者は残念でなりません。)


次に、ガーナでもっとも有名な日本人をご存知ですか?
日本人ならば誰でも知っているでしょう。「野口英世」です。


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出典:野口英世記念館


福島県出身の野口英世は1927年、アフリカの黄熱病研究のために
現ガーナのアクラを訪れ、そこで自らも黄熱病で亡くなりました。

その後、この野口英世の活躍が縁で、ガーナから日本に対して
医療協力の要請があったのです。
そうして、1969年からその支援が開始され、今現在も福島県立医科大学による、
ウイルス学の研究協力や基礎医学研究所「野口記念医学研究所」を
ガーナに設立するなど、多くの協力を日本は続けています。

このことは、カカオ豆と同じく、ガーナと日本の親交を深め続けている
大きな事実であり、両国の交流の象徴ともいえるものになっています。
ふだん、日本にいるとあまり意識しないガーナという国ですが
実は日本ととても多くのかかわりがあるのです。


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・・・



最後に、現在のガーナとこれからのガーナについて
書くことにしましょう。


「あなたの大切なものは何ですか?」

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「人を好きになる気持ち、愛情です」

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ガーナは近年目覚ましいほどの発展を続けている国です。
2007年に大型油田が発見され、2010年には石油の商業生産が開始。
石油収入を含めた2011年の経済成長率は13.6%を記録したほどです。

ガーナは今、西アフリカをけん引していく民主主義国としても、
多くの資源を持つ国としても、世界の国々から投資先として
注目を集めているのです。
もちろん、日本の企業も次々にガーナに参入しています。

しかしながらその一方で、これまで紹介してきたように
ガーナにはまだ多くの問題が残っています。
そしてそれらは、ガーナと深いかかわりのある日本としては
児童労働をはじめとして、無視できないものばかりです。


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日本とガーナの良好な二国間関係を維持・発展させるとともに、
ガーナの平和持続を実現していくためにも
日本のガーナに対する愛ある継続的な支援が
これからも必要とされているのではないでしょうか。

前述したコフィー・アナンはかつて言いました。

「今の私達にとっての敵は無関心、すなわち、世界はたくさんあり、
自分たちの世界だけに関心を持てばよいのだとする考えである。

この考えは誤っている...。

世界は一つ、人類も一つである。
そして真の公平で永続的な人間の安全は、不可分のものである。」 

と。(1997年の演説より)


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絵と写真を集めた人:
国分 敏子(2012年)
山本 敏晴(2002年)

画像データを編集し、文章を書いた人:
渡部 加奈

編集完了日:
2012年10月23日

監修・校正:
山本敏晴

企画・製作:
NPO法人・宇宙船地球号
http://www.ets-org.jp/

また、上記に掲載された地図は
以下の無料画像サイトから提供されました。
白地図専門店
http://www.freemap.jp/
posted by お絵描きイベント at 21:50| 日記