2012年01月16日

アメリカ合衆国 USA(United States of America)

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アメリカは、50州他から成る連邦国家で、国土面積と人口が世界第3位、経済規模は世界第1位を誇る超大国です。
アメリカの国内総生産(GDP)は、世界の2割強を占めます。
また、アメリカは世界の70か国以上に基地を建設し、圧倒的な軍事力を誇ります。
ストックホルム国際平和研究所がまとめたデータによると、2010年のアメリカの軍事費は6980億ドルで世界の44%を占めました。

この国の子どもたちが描いた大切なものを見せてもらいましょう。

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アメリカでは公用語は定められていないものの、英語が広く使用されています。
宗教はキリスト教が主流で、少数ながらユダヤ教やイスラム教などの信徒もいます。

アメリカはもともと、ヨーロッパからの移民が建国したこともあり、様々な人種が共存する多民族国家です。
民族構成は、白人が約72%、アフリカ系が約13%、アジア系が約5%、アメリカ先住民系が約1%などを占めます。
近年、中南米からスペイン語を母国語とするヒスパニック系移民が急増しており、21世紀の半ばには非ヒスパニック系白人の割合は半分を割ると予想されています。

「私の大切なものは祖国プエルトリコです」

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では、アメリカの歴史を振り返りましょう。

3〜1万年前の氷河期、モンゴロイドたちがユーラシア大陸から凍結したベーリング海峡の上をわたってアメリカ大陸にやってきました。
これがアメリカ先住民で、我々日本人と似た身体的特徴を備えています。

1492年、スペインのクリストファー・コロンブスがアメリカ大陸を発見すると、ヨーロッパから多くの人たちがアメリカ大陸に移住するようになりました。
以後、アメリカの東海岸はヨーロッパ諸国の植民地となっていましたが、1775年にイギリス領の13植民地が独立戦争を起こし、翌1776年7月4日に独立を宣言、1783年にはイギリスから独立が認められました。

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当時のヨーロッパでは悪天候のためにたびたび飢饉がおきました。
特に、1845−1849年にはヨーロッパ全土でジャガイモの疫病が流行し、人口の20%以上が餓死しました。
そこで、祖国で生活できなくなった人たちが新天地を求めてアメリカに移住するようになりました。
アメリカの人口は急増し、これが引き金になって19世紀の西部開拓へとつながりました。
1803年にはフランスからルイジアナを買収すると、領土を西へとひろげ、1848年にはメキシコとの戦争の末に西海岸にあるカリフォルニアも取り込みました。
その後、1867年にはロシアからアラスカを買収し、1898年にはハワイを併合するとともに、スペインとの戦争に勝ってフィリピン、グアム、プエルトリコなどを植民地にしました。

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アメリカは西部開拓によって広大な国土と豊富な天然資源を獲得し、イギリスを抜いて世界一の工業国になりました。
しかし、それは先住民たちにとっては涙の歴史です。
1860、1870年代には、先住民族たちによる蜂起が相次いでおきましたが、いずれも鎮圧され、先住民たちは不毛の土地(居留地)に強制移住させられました。
こうした行為は、著名なジャーナリスト(ジョン・オサリバン)が主張した以下の言葉によって正当化されました。
「神が与えた大陸全体を所有するのは、明白な使命である」

コロンブスがアメリカ大陸を発見したとき、アメリカ合衆国にいた先住民は約150万人と推定されていますが、1920年には約35万人に激減しています。
ジェームズ・キャメロン監督の映画『アバター』を観ると、侵略された先住民の立場を感じることができます。

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アメリカは国土が拡がるにつれ、南部の大農場で労働力が必要になり、アフリカから黒人奴隷が連れてこられるようになりました。
1808年に奴隷輸入が禁止されるまで、約50万人もの奴隷が輸入されたといわれています。
他方、北部には大農場がほとんどないため、黒人奴隷などの労働力は必要なく、北部を中心に人権意識が高まると奴隷制度に反対する動きが広がりました。
そして、1861年には、奴隷制度の廃止を求める北部と、それに反発する南部とが争う『南北戦争』が勃発しました。
1863年、北部に所属するリンカーン大統領は、「人民の、人民による、人民のための政治」という一説が有名な演説をしました。
1865年に北部が勝利をおさめると、黒人たちは奴隷から解放され、選挙権が与えられるようになりました。

「私は幸せになりたいです」

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しかし、南部諸州では黒人たちに対する差別が根強く残り、学校や交通機関などさまざまな公共施設が白人と黒人とで分けられたり、白人と黒人との結婚を禁じたなど、人種差別的な法律がつくられました。
民間レベルでも、KKK(クー・クラックス・クラン)など白人至上主義を主張する団体が結成され、同じ思想を持つ警察官による黒人の不当逮捕や裁判所による冤罪が多発しました。

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時がたって1955年、アラバマ州の州都モンゴメリー市で、黒人女性がバスの座席を白人に譲らなかったのが原因で逮捕される事件がおきました。
そこで、キング牧師はインドのマハトマ・ガンディーの非暴力運動を参考にして、モンゴメリー市に住む黒人たちに対してバスをボイコットするよう呼びかけました。
同時に、キング牧師は、バスの人種差別は違憲であると連邦裁判所に訴え、翌年、裁判に勝ってバスの人種差別は禁止されました。

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その後、キング牧師の非暴力運動に触発されるようにして、全米各地で人種差別の撤廃を求める公民権運動が広がり、1964年には人種や宗教による差別を禁止する『公民権法』が制定されました。
キング牧師はこうした人種差別撤廃の取り組みが評価され、1964年にノーベル平和賞を受賞しました。
その翌年、キング牧師は暗殺されましたが、キング牧師の誕生日は祝日となりました。

そのキング牧師が1963年にした『私には夢がある』というスピーチに、以下の一説があります。
「私には夢がある。ジョージアの赤色の丘の上で、かつての奴隷の子孫とかつての奴隷を所有した者の子孫が同胞として同じテーブルにつく日が来るという夢が。」


「私の大切なものは家族です」

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公民権法が制定されたとはいえ、黒人に対する差別は今も残っています。
都市の黒人街に住む子供の多くが貧しくて満足な教育を受けることができません。
この結果、黒人の犯罪率はきわめて高くなっているという現実があります。
一方で、2009年には、バラク・オバマ氏が黒人として初めてアメリカ大統領に就任するなど新しい動きもあります。

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アメリカは、独立以来、アメリカ大陸を勢力下におくかわりに、ヨーロッパには干渉しないという姿勢をとりました(モンロー主義)。

1914年に勃発した第一次世界大戦でも、アメリカは中立的な姿勢をとっていましたが、アメリカの船がドイツの潜水艦によってたびたび攻撃されると、連合国として参戦に踏み切りました。
以後、アメリカは軍事大国として国際社会での存在感を強めるとともに、世界一の経済大国となりました。

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ところが、1929年10月24日に株価が一斉暴落したのを皮切りに、アメリカの経済は一気に停滞しました。
国が主導して公共事業を増やすことにより雇用を創出する『ニューディール政策』を実施したものの、持続的な効果は得られませんでした。
しかし、1939年からの第二次世界大戦の特需により、軍需産業を中心としてアメリカの経済は息を吹き返しました。

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第二次世界大戦でも、当初アメリカは中立的な立場をとりましたが、1941年に日本による真珠湾攻撃がおきたのをきっかけに、連合国として参戦しました。
序盤は日本軍に押されていましたが、1942年6月のミッドウェー海戦で勝利を収めて形勢逆転しました。
そして、1945年8月に広島と長崎に原子爆弾を投下し、アメリカは日本に勝ちました。

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原爆投下は、軍人と民間人を無差別に殺してしまうため、明らかな国際法違反です。
しかし、アメリカの歴史の教科書では「終戦を早めるのに役立った」と記載されているため、アメリカ人の約6割が原爆投下を正当な行為であると考えています。
ただし、近年は荒野と化した広島を舞台にした漫画『はだしのゲン』が英訳されてアメリカ人にも読まれるようになったこともあり、アメリカ人たちの歴史観にも変化が生まれつつあるようです。

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「あたしの大切なものは信念だよ」

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第二次大戦後、ヨーロッパが焦土と化したのに対してアメリカはほぼ無傷だったこともあり、アメリカはイギリスにかわって資本主義陣営を代表する超大国となりました。
このため、世界の基軸通貨はそれまでのイギリスのポンドから米ドルにかわりました。
そこで、アメリカは、資本主義・民主主義という自らの理想を世界に広めようというグローバリゼーション(アメリカナイゼーション)を推し進め、共産主義を世界に広めようとするソ連と対立するようになりました(冷戦)。
アメリカは、このグローバリゼーションを後押しするために、軍事力を強化し、世界の各地に軍隊を配備し、朝鮮戦争やベトナム戦争などでソ連と代理戦争を繰り広げました。

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1991年にソ連が崩壊すると、アメリカに対抗する勢力が消滅したため、アメリカ式のグローバリゼーションが一気に加速しました。
この結果、世界を一つの市場として競争原理が働くようになり、地域密着型の中小企業は淘汰され、多国籍企業が巨大な利益を得るようになりました。
このような潮流のなか、多国籍企業の売り上げが国家予算を上回るという現象がみられるようになり、企業の社会的責任(CSR)が問われるようになりました。

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次に、アメリカの政治をみてみましょう。

アメリカの政治の特徴として、まず、アメリカ大統領に権限が集中していることがあげられます。
アメリカ大統領は行政とアメリカ軍の最高責任者であり、また、議会の決議に対して拒否権を行使することができます。
このようにアメリカ大統領は強い権限をもちますが、アメリカの最高権力者ではありません。
大統領選挙を戦うためには企業からの莫大な資金を必要とし、その資金援助をした企業の意見もかなり聴かなくてはならないからです。

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大統領だけではなく、議員たちも企業によって買収されています。
アメリカには、政策に影響を及ぼすことを目的として政治家に働きかけるロビイストが約3万人もいて、企業はロビイストを通じて議員たちを買収しています。
特に、ユダヤ系財閥は大きな力をもっていて、アメリカ政府はユダヤ系財閥に逆らうことができません。
このため、アメリカは核兵器の保有やパレスチナ人の弾圧などの問題で、イスラエルを擁護しつづけています。

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たとえば、国連ではイスラエルが不利になる決議に対して、アメリカは30回以上も拒否権を行使して握りつぶしています。
また、イスラエルは、2000年以降だけでも7000人を超えるパレスチナ人を虐殺していますが、このイスラエルに大量の武器を輸出しているのがアメリカです。
さらに、アメリカは北朝鮮やイランが核兵器を保有することに対しては非難の声をあげるにもかかわらず、イスラエルが核兵器を保有していることに対しては黙認しています。
その上、イスラエルにとって最大の脅威だったイラクに対しては、「大量破壊兵器を保有している」と言いがかりをつけて攻め滅ぼしました。

アルカイダなどのテロ組織がアメリカを標的にするのは、アメリカがイスラエルを擁護することによって多くのパレスチナ人たち(イスラム教徒たち)が困難に遭っていることが一因だと言われています。


「僕の大切なものは神様さ」

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アメリカは世界中に軍隊を派遣しているため、アメリカ政府は企業の中でも特に軍需産業と密接な関係をもちます。
このため、アメリカ政府と軍需産業とが結びついた『軍産複合体』という概念が生まれました。


「私の大切なものはひらめきです」

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1961年、アイゼンハワー大統領は、軍産複合体が強大な力をもつようになると、自ら新たな脅威(実際は存在しない)を作り出して仕事を増やそうとする恐れがあることを警告しました。
残念ながらそれは現実となっており、軍産複合体は、冷戦時代には「共産主義の脅威」を声高に叫んで勢力を拡大し、ときには軍事行動をともなって世界中の国々を従わせてきました。
そして、冷戦後、アメリカの軍事費は縮小する方向にすすみましたが、2001年9月11日の同時多発テロ事件を機に、「テロとの戦い」という新しいスローガンを掲げ、ふたたび勢力を拡大していきました。


「僕は世界から戦争をなくしたいです」

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2001年10月には、タリバン政権がアルカイダのオサマ・ビンラディンを引き渡さないことを理由にアメリカはアフガニスタンに侵攻し、タリバン政権を転覆して親米政権をつくりました。
戦争後、アフガニスタンの治安は悪化し、毎年2千人以上の一般市民が治安の悪化が原因で死亡しています。
テロも多発しており、ベトナム戦争と同様に泥沼化しています。

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また、2003年には、国連監視検証査察委員会(UNMOVIC)が「大量破壊兵器の決定的な証拠は見つからない」と報告しているにもかかわらず、アメリカは「イラクが大量破壊兵器を保有している」という理由でイラクにも侵攻し、フセイン政権を打倒しました。
イラク戦争後、イラクで大量破壊兵器は見つかりませんでした。
イラク政府の発表によれば、米軍によるイラク侵攻のために死亡した民間人の数は15万人に達しました。
また、ジョンズ・ホプキンス大学の調査によれば、米軍の空爆による水道等のインフラの破壊により(衛生状態が悪化し)二次的に死亡した人の数は64万人にも達しました。

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このアフガニスタンとイラクの二つの軍事行動は、チェイニー副大統領などの『ネオコン(新保守主義)』というタカ派の勢力が主導しました。
アフガニスタン侵攻後、アメリカはカスピ海からアフガニスタン経由でインド洋へと続くパイプラインを建設し、アメリカの石油企業は莫大な利益を得ました。
また、イラク侵攻後の石油利権を、チェイニーの古巣の石油会社・ハリバートン社等が独占しました。
このため、この二つの軍事行動は、アメリカ政府と軍需産業と石油産業の癒着によるものだと言われています。

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そして、アメリカの次の標的はイランです。
アメリカは、イランが従前から、核技術は原子炉などの平和利用に使用すると主張し、かつ国際原子力機関(IAEA)の視察を受け入れると主張しているにもかかわらず、『イランが核兵器を開発している』とことさらに糾弾し、軍事行動も辞さない姿勢を見せています。
イランを巡る情勢は今後も目が離せません。

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次に、アメリカの経済をみてみましょう。

アメリカの経済は世界最大で、主な産業は、農業、工業、IT産業、金融、軍需産業などです。
2007年、アメリカの低所得層向けの住宅ローン(サブプライムローン)が破たんしたのを引き金に、世界中で株価が暴落する世界金融危機を引き起こすなど、世界経済にとても大きな影響を及ぼします。

「僕の大切なものは家さ」

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アメリカには世界中の国から様々な製品が流入しており、じつはアメリカは世界最大の貿易赤字国・債務国でもあります。
また、ブッシュ政権(2001−2009年)以降、米軍のイラクやアフガニスタン駐留などによってアメリカの財政が悪化しています。
このように貿易赤字と財政赤字が併存する状態を『双子の赤字』といいます。
その上、2007年にはサブプライムローンが破たんしたため、アメリカの経済は一時壊滅的な打撃を受けました。
この結果、アメリカの失業率は9%と、高い数値を記録しています。

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このアメリカの双子の赤字を救うべく、日本と中国はアメリカが発行する国債を大量に購入していますが、2011年には、もう少しでアメリカがデフォルト(債務不履行)になるという局面も訪れました。

アメリカは超大国として世界の経済をけん引してきましたが、イラクとアフガニスタンへの侵攻以来、国内外の借金がふくらみ、今後の持続的な経済発展が危ぶまれています。

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「あたしは自然が大切だと思います」

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ところで、アメリカは世界最大の経済大国ということもあり、莫大な量の資源を消費し、かつ環境に負荷をかけています。
世界自然保護基金(WWF)は、世界中の人々がアメリカと同じ水準の生活をするためには地球5.3個分の土地(地球の再生産能力)が必要になると試算しています。
それほど大量の資源を消費しているにもかかわらず、アメリカは地球温暖化を防止する『京都議定書』を批准していません。
また、アメリカは世界で最も動物の絶滅危惧種が多い国であるにもかかわらず、生物種を保護する『生物多様性条約』も批准していません。
世界最大の経済大国であるアメリカがこうした姿勢を取るため、地球規模の問題を解決するため取組みがすすまないというのが現状です。

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アメリカは他にも様々な条約を批准していません。
まず、アメリカは、『対人地雷禁止条約』、『クラスター爆弾の使用や製造を禁じる条約』、『武器貿易条約』、『包括的核禁止条約(CTBT)』などの武器の輸出を規制する条約も批准せず、大量の武器を輸出して世界に悲劇の種をばらまいています。
また、アメリカは、国連が規定した人権を認めず、『子どもの権利条約』や『女性差別撤廃条約』も批准していません。


「私は人類の幸福を願います」

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ただし、アメリカは毎年『人身売買報告書』を作成し、人身売買問題を改善する姿勢が見られない国に対してはODA(政府開発援助)を停止するなどの圧力をかけています。
この結果、各国は真剣に人身売買問題にとりくむようになり、実際人身売買が減った国もあります。

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次に、アメリカの国民の暮らしをみてみましょう。

アメリカは世界一の経済力を誇りますが、富が適正に分配されておらず、アメリカの相対貧困率は経済協力開発機構(OECD)加盟国内で最悪です。
2011年、ビル・ゲイツの総資産は590億ドルに達しました。
一方で、2010年の国勢調査によれば、アメリカには年収約2万ドルの貧困ライン以下の人が15.1%もいて、この数値は年々上昇しています。
公民権法が成立したとはいえ、人種による経済格差は大きく、貧困ライン以下の人の割合は、黒人の場合は27.4%、ヒスパニック系は26.6%に達します。

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こうした貧困層の多くが肥満になります。
貧困な人ほど低価格で栄養の偏ったジャンクフードを食べる傾向があるからです。
このため、南部の貧しい州ほど肥満率が高く、2010年、ミシシッピ州の肥満率は34.4%に達しました。
アメリカ人の死亡要因としては、喫煙の次に肥満が高くなっており、深刻な社会問題になっています。

「私はスリムな体型を維持したいです」

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では、アメリカではなぜ相対貧困率が上昇しているのでしょうか。
まず、アメリカでは医療費が高すぎることがあげられます。
たとえば、日本では約30万円ですむ盲腸の手術が、アメリカでは約250万円もかかります。
このため、病気やけがをすると、その医療費が原因で貧困層に追いやられたり、自己破産する人が後をたちません。


「私の大切なものは健康です」

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加えて、アメリカは先進国で唯一国民皆保険制度がない国です。
民間の保険に加入できない保険未加入者は約4700万人で、保険未加入者はけがや病気をしても治療を受けることができずに死んでいます。
また、保険加入者といえども安泰ではなく、いろいろと難癖をつけられて保険金がもらえないことが多いのです。
このため、アメリカ人の平均寿命と乳幼児死亡率は先進国で最低レベルです。
マイケル・ムーア監督は映画『シッコ』のなかで、こうしたアメリカの医療制度の問題が、保険会社・製薬会社とアメリカ政府との間の強い癒着によって生まれていることを明らかにしています。


「私の大切なものは病院です」

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2011年、オバマ大統領は『医療保険制度改革法案』を成立させましたが、これは税金を使って国民の95%が民間の保険へ加入できるようにするにすぎず、公約として掲げていた国民皆保険制度といえるものではありませんでした。

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「私は十分な教育を受けたいです」

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アメリカで相対貧困率が上昇しているもう一つの理由として、教育費が高騰していることもあげられます。
アメリカの大学の学費は世界一高いため、多くの学生が学資ローンを組んで大学に進学することになります。
ところが、アメリカの大学の学費がものすごい勢いで高くなっているため、借金がふくらんで途中退学してしまう学生が後をたちません。
学資ローンには自己破産が適用されず、しかも金利がおそろしく高いため、学生は永久に返済することができない借金地獄に陥ります。

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また、たとえ大学を卒業したとしても、ローン会社から借金を取り立てる際に「刑務所におくる」と脅迫されたり、職場に嫌がらせの電話がかけられるなどの事態も多発しており、学資ローンは大きな社会問題になっています。
しかし、アメリカの政治家たちはローン会社に買収されているため、このようなローン会社の暴挙をアメリカ政府は放置しています。


「僕はいっぱい勉強がしたいです」

(ここに挿入する絵と写真を現在、検討中です。)
(参考 _MG_6241_a1.jpg NY_Draw_281_a.jpg)




にもかかわらず、学資ローンを組んで大学に進学しようとする人は増え続けています。
いま、アメリカの大学生の2/3が大学に進学する際に学資ローンを組み、その規模は900億ドルにまで達します。
人の未来の可能性を広げるはずの教育にまで経済至上主義が入り込んでいる、これがアメリカの実態です。

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アメリカの貧しい若者たちにとって最後の切り札となるのが軍隊です。
アメリカ軍に入隊すると、大学に進学するための奨学金がもらえたり、学資ローンが免除されるなどの優遇措置が講じられているからです。
しかし、実際にアメリカ軍に入っても、貧困ラインギリギリの生活を余儀なくされ、兵役を終えた後も貧しいままというのがほとんどです。
しかも、アフガニスタンやイラクから帰還した兵士の多くが重度の精神障害を負っており、家族が離散したり、まともな仕事に就けずにホームレスになることもあります。

「僕の大切なものは家族さ」

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こうしてアメリカの社会からあふれ出してホームレスになった人の一部が、貧困を苦に犯罪を起こして刑務所に行くことになります。
加えて、同時多発テロ後、アメリカではテロを取り締まるための『愛国者法』が制定されており、反政府的な人物が法的手続きを取らずに刑務所に送られるようになりました。

このため、アメリカの囚人人口は増え続けており、囚人人口は160万人以上で、世界の1/4を占めるまでになりました。
近年、こうした膨大な囚人たちを超低価格の労働力としてコールセンター業務などに利用する動きが活発化しており、労働市場が崩壊しています。
ジャーナリストの堤未果さんは『ルポ貧困大国アメリカU』のなかで、刑務所すら利用して利益をむさぼるという企業の実態を明らかにし、市場原理主義の行き過ぎに対して警鐘をならしています。

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「私の大切なものはお金と神様です」

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いまのアメリカでは、規制緩和等を推進して政府の役割を縮小する『新自由主義(ネオリベラリズム)』が勢いを増していますが、その背後には企業によるアメリカ政府の買収行為が横たわっていると言われています。
企業が国民を搾取しているにもかかわらず、アメリカ政府はそれを野放しにしているのです。
このため、わずか1%しかいない富裕層が優遇され、アメリカの富の1/3を独占しています。

そこで、怒りを爆発させた若者たちが、2011年9月17日、『ウォール街を占拠せよ』をスローガンにウォール街でデモ活動をし、オバマ大統領に対してアメリカ政府と企業との資金を通じた結びつきを禁ずるよう求めました。
この運動は全米に拡散し、さらには世界中に拡散しました。

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アメリカ独立宣言には、以下の記載があります。
「われわれは、以下の事実を自明のことと信じる。すべての人間は生まれながらにして平等であり、その創造主によって、生命、自由、および幸福の追求を含む不可侵の権利を与えられている。」

その言葉のとおり、いつかすべての人間が平等で幸せに暮らせるようになる日が来るのを心から祈りたいと思います。

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絵と写真を集めた人:
山賀緩子(やすこ)、乾久美子、山本敏晴

画像データを編集し、文章を書いた人:
矢野弘明

編集完了日:
2012年1月19日

監修・校正:
山本敏晴

企画・製作:
NPO法人・宇宙船地球号
http://www.ets-org.jp/

posted by お絵描きイベント at 17:28| 日記