2011年12月06日

エジプト Egypt

エジプト・アラブ共和国は、
アフリカ大陸の北東にある国です。

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リビア、スーダン、イスラエルと国境を接しています。
世界で一番長いナイル川がエジプトには流れています。

国の大きさは日本の3倍に近いくらいで、
人口は約8000万人、 日本の半分より多いくらいです。

首都はカイロにあります。
世界にいるアラブ人の4人に1人はエジプト人であるくらい、
アラブ人が多い国です。

人々はアラビア語を話します。
ほとんどの人がイスラム教を信じていますが、
キリスト教徒がいる地域もあります。

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農業、製造業、石油・天然ガス、小売・卸売などが主な産業です。

また、周りの国々における平和への取り組みや、
アフリカ大陸諸国の安定のために大きな役割を果たしており、
アラブにおけるリーダーのような存在です。

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そんなエジプトが今、
大きな転機を迎えています。



・・・

エジプトでは、
紀元前30世紀頃に、統一王朝ができあがりました。

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紀元前6世紀にペルシア、
紀元前4世紀にギリシア、
紀元前1世紀にローマがこの地を支配しました。

1世紀には、初期のキリスト教であるコプト教が教えを広め、
7世紀になって、イスラム教が布教をはじめました。

16世紀からオスマントルコ帝国が統治を行い、
19世紀にはイギリスがこの地を保護下に置きました。

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第一次世界大戦でイギリスとオスマントルコ帝国が
戦争をはじめたため、
1922年、エジプト王国は独立をはたしました。
1952年には、軍隊の指揮官たちがエジプト革命が起こし、
王様が国を治める王制から、
軍隊の最高指導者が国を治める体制へと移行しました。


・・・

「あなたの大切なものは何ですか?」

「僕が生まれ育ったエジプトです。」

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エジプトでは、
2011年2月に国民が反政府運動により革命を起こし、
30年間続いた政権を崩壊させました。

この政権崩壊は、2010年12月にチュニジアでおきた
革命をきっかけとして起こりました。
政府に反対する運動を行なった国民がもっていた、
不満の原因は以下です。

1.食糧価格が高騰したこと
2.失業率が高いこと
3.政権を担う側が独裁や利権の独り占めをしてきたこと
4.それに対する民衆の不安を国が抑えきれなくなったこと

この結果、
国民の不満が爆発して、エジプト政府は崩壊しました。

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その後も、反政府組織が、
北アフリカから中東にかけての「アラブ世界」をはじめ、
それ以外の各国でも反対運動を起こしました。
この革命の嵐を人々は『アラブの春』(または、中東の春)と呼びました。

この歴史的問題をうけ、
国際社会における平和と安全の責任をもつ、
国連安全保障理事会は会議を開きました。

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この会議で、
人権問題や民主化に対する支援をするかどうかについては、
各国が異なる意見を出しましたが、

1.エジプトがうまく次の政権へ引き継ぐことができるように、
2.選挙の手伝いや、憲法を改める際のアドバイスをして、
3.長期間にわたる開発の手助けをする。
これらのことをあまり干渉しすぎないように、
配慮しながら行う必要があるという点で、意見が一致しました。

「ベルリンの壁崩壊を思い起こさせる、歴史的瞬間だ。」
「今回の事態は、独裁政権でもイスラム原理主義国家
(イスラムの決まりを社会において厳密にあてはめようとする国)
でもない、民主主義国家という第3の選択が可能なのではないか。」
というように、エジプトの政変を重要な出来事としてとらえる意見を
各国が出しました。

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私たちが生きている今この時も、歴史的な瞬間がうまれている、
と筆者は感じます。



・・・

「あなたの大切なものは何ですか?」

「家に、食べ物やプレゼント、いろんなものがいっぱいあることです。」

(ここに挿入する絵と写真を現在、検討中です。)
(参考 CH5_001a.jpg)



エジプトは、「NEXT11」といって、
将来大きく経済成長するだろうと人々が期待する国のなかに入っています。

とはいうものの、この国は解決するべき経済問題を多くもっていて、
1.広がる貧富の差、2.高い食糧価格、3.高い失業率など、
国民は日々の生活において苦しい思いをしています。

エジプト政権が崩壊した原因には、
これら経済面での問題がたくさん影響しました。
史上に残る政治的危機は、
追い打ちをかけるようにエジプト経済に大打撃を与え、
国の損失額は、国内総生産(GDP)の9割にも及びました。
エジプトの外務大臣は、経済的な支援を各国にお願いしました。

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これを受け、日本の外務省はエジプトに対して、
5億円の無償資金協力をすることを決めました。

エジプトは政権が崩壊した後、
平等な社会と経済的に成長するよう、努力を重ねています。
この協力は、エジプトが自分たちの力で不平等をなくし、
雇用を創り出すなど、国を立て直すことを助けるものです。

たくさんの国がエジプトを支援しています。
もう一度勢いを取り戻す日がエジプトに早く来るよう、強く願います。



・・・

「あなたの大切なものは何ですか?」

「みんなと一緒に行く学校です。」

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エジプト政府は、20世紀のエジプト革命が起きた時、
公的機関が行う教育の授業料を、
小学校から大学にいたるまですべて無料にしてあげました。
これにより、誰もが平等に学校に通えるようになりました。

ところが、
エジプトでは、近年人口が増え続けており、
20歳未満が人口の半数に及びます。
さらに政府が教育を無料にすると、学生の数は急激に増えました。
すると、1人の先生が受け持つ学生が多くなり、
先生が学生全員に指導を行き渡らせることができず、
結果的に教育の質が低くなってしまいました。

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優秀な学生は、質の高い教育を受けようと海外へ留学し、
エジプトに戻らず海外で就職することが多くなりました。
高い水準の知識や技術をもった人々は次々に国外に出て行ってしまうのです。
エジプトの教育はこのような悪循環に陥っています。

これをうけて2010年、エジプトと日本が共同で
世界トップレベルを目指す大学
「エジプト日本科学技術大学」をつくりました。

このプロジェクトは、
エジプト政府が日本の文部科学省や外務省、
京都大学、早稲田大学など12大学と協力して実施しました。

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1.少人数制の授業、2.大学院と研究を中心とした教育
3.実践的で国際レベルの教育提供
など、エジプト国内で今までなかった特色があります。

エジプト政府は、この大学を開校することにより、
エジプト国内や中東・アフリカの国々における
経済的・社会的発展を導く優秀な人材を
長期にわたって生み出すことを目指しています。

教育の分野でも、未来を担う人々が育っていきます。



・・・

「あなたの大切なものは何ですか?」

「きれいな水を飲んだり、そこで魚釣りをしたりすることです。」

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エジプトでは、国としての保健サービスはよくなりつつあります。
健康診断、予防接種、感染症や飲料水への対策など
国は多くの制度を整えました。

ところが、都市と地方の格差が広がっており、
地方の貧しい人々にはこれらのサービスが行き届いていません。
彼らは、発育不良、貧血、寄生虫による病気など、
まだまだ多くの問題を抱えています。

これまでの支援は、
乳児や幼児、出産前後の女性を対象にすることが多く、
学校に通うくらいの子どもに向けては、あまり活動をしてきませんでした。

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NPO HANDSは小・中学校に通う子どもたちの健康を改善するための
支援をはじめました。

HANDSは、主に以下の活動を行いました。
1.学校保健を行う医師や看護師への研修
2.指導要項の作成
3.健康教育に関する教材の開発
4.計画に対する評価制度の体制づくり

このプロジェクトは、小・中学校において充実した保健活動を進めること、
そこに通う子どもの健康状態がよくなることを最終的な目標としています。

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2008年に始まったこのプロジェクトは、
2012年まで行われる予定です。
ここまでの成果をうけて、
現地の人が活動を全国に伝えたいと普及する動きを広めはじめました。

エジプトの健やかな子どもたちが、今日も元気を取り戻しています。



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「あなたの大切なものは何ですか?」

「大きな木が大切です。
下の地面にもいっぱい草が生えていたらいいなと思います。」

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エジプトは国土のほとんどが砂漠であり、
緑地はほんの少ししかありません。

ところが、
今は砂漠である場所の中に、
数千年前はナイル川が枝分かれして流れており、
自然が豊富だった地域があることを、近年の調査が発見しました。

この報告を受けたエジプトは、
可能な場所にもう一度水をひき、
その区域を農地として開拓しようと決めました。

そして、そこで300万人もの人々が生活できる新しい街をつくろう
という壮大な計画を立てました。

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株式会社日立製作所は、
エジプトの緑地を増やすための国家開発計画である、
ポンプ・ステーション建設プロジェクトに協力しました。

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実施したのは、
1.人工的な湖であるナセル湖の岸に、
2.日立製作所の製品である、大型の渦巻きポンプ約20台を取り付けて、
3.東京ドーム20杯分以上におよぶナイル川の水を毎日注ぎ込み、
4.砂漠地帯に水を入れよう。
というものでした。

このプロジェクトが緑地化した面積は、
東京都を越える広さになりました。

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ポンプ・ステーションの完成後、
人々は、トマトや玉ねぎ、ピーマン、メロンなど農作物を育てはじめ、
新しい街づくりを着々と進めています。

古代エジプトの水を呼び戻すため、
そこに新しい暮らしを生むため、
エジプトの人々は、夢の計画を叶えるでしょう。



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「あなたの大切なものは何ですか?」

「エジプトがエジプトであること、が大切です」

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この絵が描いてある、紙のようなものは『パピルス』といいます。
パピルスは、古代エジプトにおいて人々が使ったものでした。
紙の原型としては世界最古のもので、
エジプトで受け継がれた大切な文明の一つです。

薄く切った植物の茎を、縦と横に並べ、
その上に重い石をのせ乾かしてつくります。

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昔、エジプトは、多くの神を大事にする多神教の国でした。
1000以上の神々を人々は尊んでいました。
何千年も前に人々がつくった、
世界最古のピラミッドが、エジプトにはあります。
エジプト文明は、四大文明の中でも一番古い歴史をもっています。

ところが、現在のエジプトで、
人々が信じるのはイスラム教とキリスト教です。
古代エジプト時代の多神教を信じる人はいません。

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かつて、他の国や異なる宗教をもつ民族がエジプトを攻め、
混血化をすすめたために、古代エジプト人という純粋な民族は消滅しました。
しかし、古代エジプト人の遺伝子を受け継いだ人々が
明日も生きようとする気持ちは変わりません。

古くて大切なもの、新しくて希望あるもの、
それぞれが、パピルスの繊維のように組み合わさって
一つの強い力をつくりだす、
そんな風にエジプトが在りつづけますようにと、
筆者は心から願います。





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絵と写真を集めた人:
寿 美和(トシナガ ミワ)
山本敏晴

画像データを編集し、文章を書いた人:
渡部香織

編集完了日:
2011年12月13日

監修・校正:
山本敏晴

企画・製作:
NPO法人・宇宙船地球号
http://www.ets-org.jp/

posted by お絵描きイベント at 10:22| 日記