「私の大切なものは、『美しい国』です。
自然は神さまが、街や歴史は人間が作りました。」

イタリアは、半島といくつかの島から成ります。
古くは、ヨーロッパ大陸の交通の要所として発展しました。
また、芸術やファッション、哲学などが生まれ
世界に発信されていきました。
その一方で
かつて政界や財界を動かしたマフィアの末裔が
今でも息をひそめています。
華やかな文化と、黒い脅威を併せ持つ
この国に魅了される人は多く、
物語や映画の題材になることもしばしばです。
例えば、映画監督の宮崎駿がその一人です。
『紅の豚』(日本、1992年)は、
第一次世界大戦後のイタリア アドリア海を舞台にしています。
イタリアの風景や文化を求めて、
世界中から観光客がやって来ます。
それは同時に、街や自然が汚され
その美しさを失うことを意味します。

これに対し、現地 NGO Legambiente は
湖岸清掃や、自然・文化遺産の保全に関するスタディ・ツアーを
行っています。
日本の NGO NICE は、NGO Legambiente の
活動に参加できるツアーを企画しています。
また、ICCROM
(International Centre for the Study of
the Preservation and Restoration of Cultural Property)
が国連専門機関として、ローマに設置されており、
文化財の保存と修復に関する研究が行われています。
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「私の大切なものは、『人と人の間の平等』です。
世界には様々な民族がありますが、
そのあいだに優劣は無いはずです。」

イタリア政府は『人道ミッション』として、
予算から500万ユーロをチュニジア難民支援に充てています。
人道ミッションとは、まず難民に対して食料支援・医療支援を行い、
中長期的には本国帰還を目標にしています。
この計画は今後、リビア難民に対しても行うそうです。
しかし、イタリアに流入した難民の数が既に
施設の収容可能数を上回っていると言われています。
このような政府主導の難民受け入れ対策に限らず、
近年では、中東や北アフリカからの移民がイタリアに流れ込んでいます。
…
「私の大切なものは、『団結力』です。
なぜなら、団結力は世界を一つにするからです。」

「移民に雇用機会や住居が奪われるのではないか。」
との不安から、イタリア国民のあいだでは
保守傾向に走る風潮が見られます。
例えば、イスラム教徒の女性が
かぶらなければならないとされている、
ブルカ禁止法の法令化です。
フランスでは既に施行されており、
イタリアでも2011年内に制定される可能性が高いです。

ブルカ禁止法は、イスラムの女性を身体的に解放するのは確かです。
しかし、行き過ぎとも言える保守主義の下で
イスラムの人々は本当に自由なのでしょうか。
…
「私の大切なものは、『豊かさ』です。
豊かになれば、フェラーリやトヨタに乗れます。」

イタリア南部は、北部に対して工業化が遅れているため
経済格差が生じています。

これについて、
かつてはそれぞれの都市国家だったという意識が
地域産業とマフィアの癒着を許し、大企業の進出を妨げている
という見解もあります。
このような内需中心の経済に加え
ユーロ危機がイタリアの財政を圧迫しています。
債務が膨らむユーロ圏に対し、
日本政府は、ユーロ圏債権を購入することを決めました。
…
「私の大切なものは、『繋がり』です。
人は誰かと繋がることで、互いを高めあうことが出来ます。」

もし、日本でIP電話や携帯電話の回線が
数分でも途絶えたら、大パニックに陥るでしょう。
しかし、電話が繋がらないことに
イタリア国民は慣れています。
接続が数時間切れたり、電話回線が混線することも
珍しくありません。
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「私の大切なものは、『信頼』です。
信頼は、繋がりを密にします。」

イタリアでは電話だけでなく、
郵便や交通機関なども遅延や停滞が茶飯事です。
このような、人や情報の流れが滞りがちの社会に
大企業の信頼は低く、産業の国外流出を招き、
ますます経済のグローバル化が遅れます。
…
「私の大切なものは、『自由』です。
世界の人々が、麻薬や戦争から解放されて
イルカのように自由でありますように!」

イタリアンマフィアによる経済活動は、
年間約1300億ユーロ(約15兆8600億円)を
計上するとも言われています。
彼らによって流通した麻薬や覚せい剤は
イタリア社会に深く根を張っています。
2004年の政府の調査によると
イタリア人の3人に1人は、
15〜19歳のあいだに
麻薬を1度は経験すると言います。

また、マフィアが公共事業に介入することもあり
企業の成長を阻む一因であるとも考えられます。
…
「私の大切なものは、『平和』です。
戦争が人間を全体主義や、暴力に駆り立てます。
平和は人間を、それらから解放します。」

イタリアは、ドイツや日本と同様に、
第二次世界大戦の枢軸国であり、敗戦国です。
我々は、戦争の罪と虚しさを
後世に伝える役割を共に背負っているのではないでしょうか。
今度は平和のために、日本とイタリアは
グローバル・パートナーとなるべきなのです。
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絵と写真を集めた人:
山本 敏晴 (2005年11月 )
イタリア語の翻訳をした人:
藤野 沙優
画像データを編集し文章を書いた人:
小野 明日美
編集完了日:
2011年9月17日
監修・校正:
山本 敏晴
企画・製作:
NPO法人・宇宙船地球号
http://www.ets-org.jp/