2011年08月30日

モザンビーク Mozambique


モザンビーク共和国は、
アフリカ大陸の南東部にあります。


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2010FIFAワールドカップが開催された
南アフリカ共和国など6ヵ国と国境を接し、
東側にはマダガスカル島が浮かびます。

緑豊かな大地と資源に恵まれており、
とうもろこし、綿花などの農業、
アルミ産業、石炭や天然ガスなどの鉱業が盛んな国です。

また、モザンビーク海峡で獲れるエビは、
大変美味しく日本にも多く輸出されています。

人口は約2.289万人で、日本の6分の1です。
国の面積は日本の約2倍。
40以上のたくさんの民族がいます。

キリスト教をはじめ、
イスラム教、原始宗教が信じられています。



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上の絵は、この国の子どもが描いた、
モザンビークの地図です。
確かにこの国は、このような、ペガサス(天馬)のような形をしています。
右側(東側)は海に接しており、
左側(西側)は、内陸部です。


モザンビークの起源は、
1世紀に定住した民族バンツー族が
連合王国のモノモタパ王国を築いたことに
さかのぼります。

15世紀ヴァスコ・ダ・ガマの訪問がきっかけとなり、
16世紀からポルトガルの植民地となりました。
現在の公用語もポルトガル語です。

20世紀に入ると、
反ポルトガルの蜂起が次々と起こり、
1975年に独立をしました。

国単位の戦争が終わると、
それまでは抑えられていた、
国の中の派閥が数多くの争いをしました。

次々と国内紛争が起こり、
多くの命が失われました。

そして、
今から19年前の1992年、
長い内戦が終わりました。



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「あなたの大切なものは何ですか?」

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「もう、心が痛む思いはしたくありません」

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ポルトガルの植民地だった、モザンビークですが、
1975年、独立戦争を経て、
モザンビーク人民共和国が生まれました。

しかし、独立後に起きた17年にも及ぶ内戦により、
多くのものを失いました。

内戦後に日本の内閣府は、
停戦と武装解除、選挙の監視、人道支援をするため、
国連モザンビーク活動を行いました。

日本にとって3番目の国連平和維持活動(PKO)です。

内戦が終結したからといって、
その国にすぐに平和がおとずれるわけではありません。

国連平和維持活動(PKO)はその活動を通して、
モザンビークの復興への道を一緒に歩みました。

「酒も、煙草もやめよう。争いも終わってほしい。
向かい合って、手をとって前へ進みたいんだ。」

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国連PKO活動には、たくさんの国々が協力しています。
同じ、途上国である、アフリカやアジアの国々からも協力に来ています。
先進国からの援助だけではなく、
途上国同士で、平和構築のための活動を続けています。

このように、
途上国同士が、援助をしあうことは、近年増えてきています。
その方が、人件費が安くすみ、プロジェクトを効率的に運営できたり、
宗教や文化などが近く、受け入れやすいことなどが、その要因になっています。

モザンビークは紛争終結後の平和構築において、
非常に価値のある成功を収めた国といわれています。

今後も困難を乗り越えながら、
ますます発展の道を歩むでしょう。



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「あなたの大切なものは何ですか?」

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「豊かな生活です」

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2009年に行われた、世界の貧困率調査では、
モザンビークは世界で5番目に悪い状況の国
といわれています。

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たくさんの国からのお金を集めて運営されている国際機関の一つに、
世界銀行グループがあります。

この中の、国際開発協会では、
鉄道建設などのインフラ整備(社会基盤となる道路などの建設)の
手伝いをしています。

紛争が終結した、開発途上国においては、
モノを運ぶということが重要になります。

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この鉄道建設や、その他の設備づくりにより、
1997年から5年間、
モザンビークの経済成長率は
世界最高レベルにまで達しました。

貧困率も改善されてきていますが、
未だ国民の半数は
日々の生活が大変な困難を伴う『絶対貧困』にあります。

(絶対的な貧困とは、各団体によって定義が異なりますが、
 1日1ドル以下で暮らしている、というものや、
 1日2ドル以下で暮らしているもの、などがあります。
 上記のケースでは国際協力機構(JICA)の定義である、
 1日1.25ドル以下、というものを指しています。)


経済の成長は必ずしも
直接的に貧困を減らしていくものではありません。

経済の成長によって、
利益を得るのは誰なのか。
貧困を解決するには、
できる限り、最貧困に面した人々の生活が向上するよう
配慮した経済成長の仕方をする必要があります。

国際開発協会は、
最も貧しいといわれている国の政府に対して、
利子をなくし、返済期間をできるだけ長くしてあげる形で
お金を貸してあげています。



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「あなたの大切なものは何ですか?」

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「学ばせてくれる場所、学校です」

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モザンビークは、小学校などで教育を受けた人が、
ほとんどいない国です。

国連が、25歳以上の成人に対して調査した所、
なんと、国全体の平均で、1年しか、学校にいっていませんでした。

(ちなみに日本は、12年ぐらいです。)

この結果、成人識字率は44.4%と、
2人に1人は字が読めません。

モザンビークの義務教育は7年間ということになっていますが、
(実際は、学校に行っている人は、あまりおらず)
依然として、低い識字率です。

文字が読めないことは、
生活する上で大切な情報が読み解けず、
困難をともなうことがあります。

例えば、
服用する薬の説明書きが理解できず、
生命に影響を及ぼすことがあります。


国際協力機構は、
教員の質を改善するプロジェクトを実施しました。

近年、さまざまな努力により、
就学率が上がっています。

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それにともない、教員の不足が問題になっています。

国全体の平均では、
教員一人当たりの生徒数は67人になります。
そのため、資格を持たない教員の採用が増えています。

このような状況の中、
資格の有無を問わず、
教員全体の質を上げることが必要となりました。

国際協力機構は、
1年に1〜2回、講義だけだった研修を、
1ヵ月に1回、実習を入れることにしました。

現地の教員が、
国際協力機構から教わったことを、
その通りに再現した授業をするための
プログラムが行われています。

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この活動は2012年まで行われる予定で、
どのような成果となるか、期待されています。

教員のレベルが上がり、生徒への目が行き届く。
これが識字率のさらなる向上につながるでしょう。



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「あなたの大切なものは何ですか?」

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「心から信じることのできる愛情です」

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2010年国連合同エイズ計画(UNAIDS)の発表によりますと、
モザンビークの成人HIV感染率は、
世界で8番目に高いという結果が出ました。

10人に1人がHIV/エイズに感染しています。

国の保健省の中に、伝統医療研究所があります。

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モザンビークでのHIV/エイズ予防対策の一つとして、
この研究所では、伝統医療を行う施術者に向けた、
新しいトレーニング・マニュアルをつくっています。

モザンビークをはじめ、アフリカ大陸の国々には、
今も伝統医療が人々の身近にあります。

しかし、誤った施術により、
HIV/エイズに感染してしまうことがあるのです。

その具体例としては、
伝統医療の一つとして、
(出血している)傷があった時に、
そこに、伝統医療の施術者が、自分の口をつけて、
吸い取って、治そうとした場合、
その行為によって、HIV/エイズに感染する、
などです。

上記のようなことが起きるため、
エイズに対する支援活動をする人々は、
伝統医療従事者がHIV/エイズに感染しないような
教育をしてあげることが必要だとされています。

と、いうように
伝統医療には、さまざまな問題点があるために、
西洋医学的には、やめさせた方が良い場合が多いのですが、
そうはいっても、
何百年も続いている現地の文化を
(ある日、突然やってきた外国人グループが)
根本から否定することはできないため、
そのバランスをとることが難しいと言われています。



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「あなたの大切なものは何ですか?」

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「環境です。失われないでほしいです」

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近年、モザンビークにおいて
産業基盤の建設が活発にすすめられています。

生活の土台が整備されると、
人々の暮らしは豊かになります。
一方で、
力のある政府や企業が自分たちの利益に注視すると、
環境破壊という負の部分が多くなってしまいます。

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中国は、道路やダムなど産業の基盤となる設備づくりを
自国の(建設会社などの)企業に請け負わせ、利益を得ています。

また、開発の見返りに、
石油やレアメタルなど、資源を受けることも狙いのようです。

政府に多額の資金を渡し
環境が破壊されても、なお開発を推し進める姿勢に対し、
ヨーロッパ、アメリカから反対の声が出ています。

これはもはや、
国際協力ではなく、『中国型新植民地主義』である
という懸念も出ています。


開発によって生じる問題にも配慮し、
いかに良い面の多い国際協力をするかが、
課題となっているようです。


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これに対して、環境や人権を保護する団体からは、
避難の声が上がっています。

モザンビークNGO団体のダニエル・リベイロは、
「中国の政府や企業は、
現地の住民と十分な話し合いの機会を設けるべきだ。

途上国開発をするのなら、自国の利益だけでなく、
現地で生きる住民の生活がより良いものになるよう、
配慮してほしい」

と意見しています。



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「あなたの大切なものは何ですか?」

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「明日も生きたいと、希望をもつことです」

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絵と写真を集めた人:
高木亜麻子(2010年, CICD, ADPP)

画像データを編集し、文章を書いた人:
渡部香織

編集完了日:
2011年9月6日

監修・校正:
山本敏晴

企画・製作:
NPO法人・宇宙船地球号
http://www.ets-org.jp/

人物が写っていない画像は、
以下のフリー素材会社から提供を受けたものもあります。
(株)データクラフト「素材辞典」
http://www.sozaijiten.com/

posted by お絵描きイベント at 08:29| 日記