2011年07月23日

モンゴル Mongolia





モンゴル国はユーラシア大陸の内陸部にあり、南側を中国、
北側をロシアに囲まれた内陸国です。

高原の大草原とゴビ砂漠の国として知られています。


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大相撲の白鵬や朝青龍の母国でもあります。

「初恋の味」カルピスがモンゴルの乳製品をヒントに生まれた
飲み物だということはご存知ですか?


国土は日本の約4倍の大きさで、人口278万800人。
世界で最も人口密度の少ない国として知られています。

95%以上のモンゴル人と少数民族のカザフ人等で成り立っています。

モンゴル民族の居住地域であるモンゴル高原のうち、ゴビ砂漠以北の一帯に
ほぼ該当する領域がモンゴル国です。

これに対し、モンゴル高原の南部は「内モンゴル自治区」と呼ばれ、
現在は中国の領土となっています。



「あなたの大切なものは何ですか?」

「モンゴルの自然です。」



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実際の彼の生活は都市部に住み、TVゲ-ムの大好きな少年です。
美しい大自然もあり、現代的な物に溢れた生活もあり、と
現在のモンゴルの状況を象徴しているかのようです。


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「あなたの大切なものは何ですか?」

「昔からの遊牧民生活です。」


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かつてはチンギスハーンの下、世界史上、最大の国家を形成しました。

大草原を騎馬で行き交うのが伝統的遊牧民で、
遊牧民の歴史は数千年にわたります。

 



「あなたの大切なものは何ですか?」

「国旗です。自分の国に誇りを持ち、将来もっと素晴らしい国
にしていきたい。」



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モンゴル国の国旗は、赤は繁栄を表す火を、青は平和と永遠を表す青空を意味します。

左側の黄色い模様は国家を象徴し、上から炎(過去・現在・未来の意)、
太陽(民族の母の意)、月(民族の父の意)、上下の逆三角形が槍(敵の制圧の意)、
長方形が正直さを表します。
その間に2匹の魚(警戒心の意)、左右の長い長方形は国民の団結心の象徴とされます。






「あなたの大切なものは何ですか?」

「モンゴル族です。モンゴル族は、勤労、勇敢、悠久な歴史を
持っているからです。」


国名はモンゴル人に由来し「勇敢な人」と言う意味を持ちます。



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13世紀,チンギス・ハンやその後継者たちがアジア,ヨーロッパにまたがる
大帝国を築き上げました。

チンギスの孫であるフビライ・ハーンが派遣した元軍は,日本にも
二度襲来(元寇)しています。

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このように世界を席巻したモンゴル帝国(元朝)ですが,やがて漢民族の明朝
に追われてモンゴル高原へ撤退。

17世紀からモンゴルの諸部族は清朝の支配下に入りました。

1911年の清朝滅亡(辛亥革命)によって独立を宣言しますが,
まもなく中国軍閥の支配を受けるようになりました。

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「あなたの大切なものは何ですか?」

「歴史です。過去の出来事を忘れずにいたいからです。」



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1924年,ソ連の支援を受け、独立。
ソ連に次ぐ世界で2番目の社会主義国として,
モンゴル人民共和国が誕生しました。

それからモンゴルは約70年に渡って社会主義国でした。


その間、モンゴル文字が廃止されたり、歴史の教科書の中でチンギス・ハーン
は否定的にとらえられ、教えられませんでした。




「あなたの大切なものは何ですか?」

「チンギス・ハ-ンです。僕の英雄です。」



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1991年のソ連崩壊の影響を受け、1992年にモンゴルは民主化しました。
モンゴル人民共和国からモンゴル国となりました。

民主化以降の教育では、モンゴル文字やチンギス・ハーンが復活しました。






ノモンハン事件をご存知ですか?
1939年、満州国とモンゴル人民共和国の間の国境線をめぐって発生した
日ソ両軍の国境紛争事件です。

当時の大日本帝国とソビエト連邦の見方では、この衝突は一国境紛争に過ぎない
というものでした。
しかしモンゴル国は、人民共和国時代よりこの衝突を「戦争」と称しています。
たくさんの犠牲者を出しました。


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「あなたの大切なものは何ですか?」

「素敵なレストランで食事をすることが夢です。」

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長い間、社会主義経済システムを採用してきたモンゴルでは,
1990年前後に始まった市場経済への移行により、
旧ソ連の支援の引き上げ、国軍の大幅削減、国有企業の民営化、
不採算部門の切り捨てが進行し、大規模な人員削減、企業倒産によって
失業率の上昇や貧困の拡大が発生しました。



名目GDP:日本の約100分の1

一人当たりGDP:日本の約20分の1








「あなたの大切なものは何ですか?」

「五畜です。」


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モンゴルの経済の特徴として牧業があります。

主な家畜は、羊、山羊、牛、馬、駱駝(ラクダ)で、これらは「五畜」と呼ばれています。


従来は「小さな家畜」と呼ばれる羊、山羊のうち、羊を主な家畜として飼うことが
一般的でしたが、山羊からとれるカシミア原毛が現金収入につながるため、
山羊の頭数が年々増加し、山羊は羊と違い、草を根元から食べるために草原の
砂漠化を助長しています。

また、気候変動による気温上昇や降水量減少による牧草地が衰退し、
砂漠が進行しています。

加えて近年の雪害によって、遊牧民は家畜を失いました。

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その為、遊牧民の人々が仕事を求めて都市部に移住するため、

急激な人口増加が進み、都市の中に貧困に苦しむ人々がたくさんいます。


現在、首都・ウランバートルに人口の半分弱の
115万1,500人が住んでいます。







「あなたの大切なものは何ですか?」

「大都市で暮らすことが夢です。」


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貧困によって家庭が崩壊した多くの子供たちが
ストリ−トチルドレンとなり、5〜14歳の子供たちのうち約35%が
何らかの労働に就くなど、多くの社会問題が生まれています。




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国家崩壊や社会システムの激変が起きるとき、社会的弱者ほど
大きな影響を受けます。







「あなたの大切なものは何ですか?」

「私は歌手になりたいです。
歌が上手なことを皆に知って欲しい。
歌手になって、お金持ちになりたい。」



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彼女は4人家族。社会主義から自由経済の移行により、父親のお給料は
すべてアパ−トの家賃になってしまいました。
その為、母親も働いており、母親のお給料でなんとか生活費をまかなっている
という状況なのです。



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モンゴルでは、貧困の拡大や社会不安から来る家庭不和などによって
多くの子どもたちが家庭の保護を受けられなくなり、
学校にも行けなくなりました。

両親の失職、アルコール中毒からの子どもへの虐待などの困難な家庭事情
により、家出をする子どもが続出しました。

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零下40度にもなるモンゴルの厳しい冬、ストリートチルドレンたちは
マンホールの中に生活の場を求め、「マンホールチルドレン」となります。
マンホールの中は給湯管が通っていて、真冬でも15度と温かいからです。

しかし、マンホールは汚水が漏れている所、虫が湧いている所があるなど
その環境は劣悪で、子ども達は常に感染病や皮膚病の脅威にさらされています。

ほとんどの子ども達が3人〜5人でグループを組んで生活しています。

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5〜10歳の体格が小さい子どもがいるグループは、小さい子に物乞いを
させたり、歌を歌ってお金を稼がせます。

その間、他の子ども達は近くで遊びながらその子の様子を見守っています。
そして、1日の収入を皆で分け合って食料を買います。

10歳〜18歳の年齢で構成されたグループは、市場でのもの運び、車拭き、ガム
売りなど単発の仕事を探して生活の糧にしています。

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女の子は仕事に就くのが難しいため、レストランやホテルのゴミ箱から食べら
れそうなものを拾ったり、外国NGOのお弁当の配給を頼りに生活しています。


世界食糧計画が発表した「2011年世界飢餓現況地図」によりますと、
モンゴルは 北朝鮮やインドと同じく、栄養失調に陥った人の割合が比較的
高い国に分類されました。

モンゴルの住民の20%以上が栄養失調に陥っているとみています。








「あなたの大切なものは何ですか?」

「世の中のあらゆる悪い状況を、皆に知ってもらいたい。
そして、よい社会になって欲しい。」


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恵まれない子ども達を保護するために、都市には多くの孤児院が設置されました。

現在、政府系と民間NGOをあわせてモンゴルに孤児院は50程度あると
言われています。

ウランバートルにある子ども住所確定センターは日常的にマンホールや
路上を見回り、子ども達を保護する活動を行っています。


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保護された子どもは2週間〜1ヶ月センターで身元調査を行われ、
身寄りのある子どもは親元へ、身寄りのない子どもは孤児院へと
連れて行かれます。

モンゴル第二の都市ダルハン市では、マンホールに蓋をつけ南京錠をかける取
り組みを行っています。


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以上のように、国をあげて子ども達を保護する取り組みを行っており、
10年前には数千人いたといわれているマンホールチルドレンは、数百人にまで
減りました。

それでもマンホールで暮らしている子ども達がいなくなることはありません。

孤児院に行っても、集団生活に馴染めなかったり、孤児院の規律に従えなかったり、
孤児院よりも路上での暮らしを選ぶ子ども達がでてきたのです。



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また、最近では、マンホールに家族連れや青年達が住む姿が目立つようになっ
てきました。

以前、家をもてない家庭は、マンションの地下にある配電線室や管理人室に暮
らしていました。


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しかし、貧困層が増え、マンションの地下にさえ住めなくなった家族がマンホ
ールで暮らすようになってきたのです。

日本と異なり、労働需要の絶対数が少ないモンゴルでは、高卒で働ける機会は
非常に限られています。

レストランやスーパーで働くにも競争があります。そして、就職には高度の専
門性が必要とされます。


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孤児院運営の都合上、行き場がなくても卒業させる所が殆どですが、
その結果マンホールでの生活に逆戻りしてしまって貧困から抜け出せ
なくなったり、女性の場合だと性犯罪に巻き込まれたりすることもあります。


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また、運よく職につき、家庭ができたとしても、
低賃金のため子どもを養えないという人も多いのです。

結果、子どもを孤児院に預けたり、あるいは子どもがマンホールでの生活を余
儀なくされる場合もあります。

マンホールから出た子ども達が再び元の生活に戻り、
貧困のサイクルから脱却できなくなることがあるのです。


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NGOゆいま-るハミングバーズでは、こうした貧困のサイクルを断ち切るための
奨学金支援を行っています。

孤児院卒業後の進路の問題によって、 子ども達を真に自立へと導けていない
実情があります。

そこで、孤児院と協力関係を結び、孤児院卒業生の大学進学を応援しています。

貧困のサイクルを解消するためには、孤児院の子ども達が大学で専門性を身に
つけて就職し、モンゴルの明るい未来に貢献する立派な大人へと成長することが
必要だと考えるからです。










「あなたの大切なものは何ですか?」

「学校です。」


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彼女の家族は遊牧民です、ゲル(移動用テント)で暮らしています。
季節ごとに家族単位で移動をして暮らしていく彼女にとって、
唯一外との接点が学校なのです。

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社会主義崩壊後、所得格差による教育の不均衡が発生しました。

教育行政能力の不足、教育インフラの未整備、教員の質の低下、
高等・専門教育の未発達、地方における就学率の低下等
様々な問題が生じています。

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このような状況に対し、モンゴル政府は教育を国家発展の基礎と位置づけ、
教育の質の改善・効率の向上等を掲げた「教育改革基本方針」を
1997年に策定しました。

現政権においても教育に関する政策を重点課題とし、先進国への留学
促進を目指しています。

モンゴルは、貧困削減の国家戦略において、教育の質の向上と
アクセスの拡大及び2015年までの初等教育の完全普及の実現を
開発課題の優先目標の一つとして掲げています。


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ところが、以下のデータがあります。

識字率 (UNESCO)
成人識字率 97.8%(2000) 97.5%(2005) 97.3%(2007)
青年識字率 97.7%(2000) 96.1%(2005) 95.4%(2007) 

つまり、上記のような目標を掲げているにも関わらず、
識字率は、青少年でも、成人でも、低下してきているのです。

早急な対策が求められます。


ちなみに、教育関係に使われるGDPの割合は5%(CIA2004年)で、
経済協力開発機構(OECD)の平均が4.9%であるのと
比べると、平均的です。

識字率の低下は、それ以外にあると考えられます。


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日本政府では平成20年度、首都ウランバートルの小学校12校の教室や
机・椅子・黒板等の建設に協力しました。

この支援により、合計155教室が建設され、
新たに約1万2千人の生徒の受入が可能になりました。

今後ますます教育環境が改善されていくことでしょう。












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モンゴルの経済の中心は畜産業と鉱業ですが、主要産業は伝統的な
牧畜業から豊富な鉱物資源を背景にした鉱工業が
中心になりつつあります。

広大な土地柄、金や石炭、また今や話題のレアメタルにおけるまでの
天然資源が隠れているといわれています。

それは、モンゴル国の約7割が未開拓の土地や場所があるからなのでしょう。


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天然資源である石炭や金、レアメタルなどは年々価格の高騰が続いています。

今後,ほとんど未開発の大規模炭田や注目を集めるウラン,レアアースの
開発が進めば,モンゴル経済は名実ともに鉱物資源大国として
更なる経済発展が見込まれます。


菅直人首相は2010年、モンゴルのTsakhiagiin Elbegdorj大統領と
会談し、モンゴルの鉱物資源開発に向けて
戦略的パートナーシップを締結しました。


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これにより東芝では、ウランや希土類元素(レアアース)や希少金属(レアメタ
ル)などを対象に、モンゴルの持続的な経済成長に重要となる火力や原子力、
太陽光発電システムや送電網などの主要な社会インフラ整備の実現可能性を
検討するとともに、鉱物資源開発の安定した供給の確保に向けて
モンゴルの会社との相互開発を進める方針を出しました。

新興国として、資源国として、外貨流入なども盛んに行われ、モンゴルの経済
発展は続いていくでしょう。


なお、現在のモンゴルの、経済成長率は、6.1%(2010年速報値、世界銀行)
と、2%前後の日本に比べて好調です。


「初恋の味」カルピスのカルピス社は、創業者三島海雲が内モンゴル
(現:中国内モンゴル自治区)でモンゴルの発酵乳にヒントを得て
これをベースにした「カルピス」を作り出しました。


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カルピス社は経済産業省の独立行政法人 製品評価技術基盤機構(NITE)
との間で、モンゴルの発酵乳などから分離された微生物(乳酸菌や酵母)
を現地で収集し、食品への利用可能性を探る産官共同事業を開始しています。

モンゴルは寒暖の差が激しく、砂漠、高山、針葉樹林帯、草原、塩湖等の
バラエティーに富んだ環境や日本にはない特殊な環境があります。


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苛酷な環境に生息する微生物は、環境に適応するため特殊な能力を持って
いることが多く、例えば医薬品、健康食品、工業原料等の製造、有害物質の
分解による環境浄化等への活用がモンゴルにおいても、
また、日本の産業界においても期待されています。

2010年名古屋で生物多様性条約が締結されました。
先進国が途上国にある生物資源(遺伝資源)から
健康食品や医療品を作り出した場合、利益の配分を途上国に対し
行うというものです。

その生物多様性条約に基づき、カルピス社は収集した微生物は
商品化された場合は、製品評価技術基盤機構(NITE)を通じて、
収益の一部をモンゴルに還元するとしています。






「あなたの大切なものは何ですか?」

「モンゴル国の未来と幸せです。」


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経済産業省が2010年秋から米エネルギー省と共同で、使用済み核燃料などの
世界初の国際的な貯蔵・処分施設をモンゴルに建設する計画を極秘に
進めていることが明らかになりました。

ロシアやフランスは原子炉と廃棄物処理とをセットに
国際的な原子力発電所の売り込みをしています。
処分場を自国内に持たない日本とアメリカは、このロシアやフランスに
対抗するのが主な狙いのようです。

そしてモンゴルは見返りとして日米からの原子力技術支援を受けるようです。
原子力エネルギーは気候変動を防ぐ有効策とされ、
原子炉1基数千億円のビッグビジネスとも言われています。
核廃棄物の国内処分地選定の見通しが立たない日米と、技術支援で
核燃料加工施設や原発を建設したいモンゴルの思惑が一致したということでしょうか。

モンゴル政府内には、見返りとして核燃料加工などの技術供与も得ることで、
核燃料の輸出国として経済を発展させたいとの思惑があるようです。




 
モンゴルは、こうした経済成長に伴い、今後大きく発展していくでしょう。

未来は明るく感じられます。

しかし、その一方では貧富の差が広がり、貧困に苦しんでいる人たちがいる現状も

あるのです。

では、幸せとは何なのでしょうか。

あなたの大切なものは、何ですか?





・・・
・・・


絵と写真を集めた人:
山本敏晴
(2006年9月)

画像データを編集し、文章を書いた人:
澤田 輪香子

編集完了日:
2011年7月30日

監修・校正:
山本敏晴

企画・製作:
NPO法人・宇宙船地球号
http://www.ets-org.jp/

posted by お絵描きイベント at 14:54| 日記