コロンビアに住む、ある一人の少年は
次のように言いました。
「私の大切なものは『神様に感謝すること』です.
なぜなら,神様は私達を愛してくださっているからです.
(colo_0503p_41_Pablo_a2.jpgを、他の画像と入れ替える検討中。)
(_MG_3482_a.jpgを、他の画像と入れ替える検討中。)
コロンビアで採れる
エメラルドや花,音楽,
そして人間の美しさは
神様の愛そのものです.

神様の愛に応え,日々感謝さえしていれば
良い道から逸れることはありません.」

温暖な気候と豊富な天然資源.
生まれてくる女の子は美女揃い.
隣国は世界最大の消費国アメリカ.

コロンビアほど, 自然にも経済的にも恵まれた国を
あなたはどれだけ挙げられるでしょうか.

ただし,あなたがこの楽園を訪れるときは気をつけてください.
与えられた以上を欲したとき,
あなたは武器を手にし
武装組織の一員となっているでしょう.
そしてさらなる楽園を望んだとき
麻薬があなたを快楽へと誘うでしょう.

コロンビアは、
恵まれた地理的特性を持ちながらも
内戦が続いており、
世界で最も治安が悪い国の一つなのです。
そして、世界最大の麻薬の生産地の一つとしても
知られています。
……
先ほど『神様に感謝すること』が大切だと言って
絵を描いてくれた少年のお姉さんにも、
聞いてみました。
「あなたの大切なものは何ですか。」
「私の大切なものは『悪魔の存在を感じること』です.


良い人には一生かけてもなれないかもしれません.
けれども,悪人になるのは一瞬です.
なぜなら悪魔はそこら中にいて,
心の隙につけこむチャンスを
虎視眈々と狙っているからです.
私たちは悪魔の囁きと天使の声を
聞き分けなければならないのです。」

「私の大切なものは『正しい判断』です。
善悪を正しく判断できれば、
私たちは喜びに導かれ、
判断を間違えると
悲しみの奴隷となるでしょう。」
(ここに挿入する絵と写真を現在、検討中です。)
(参考 colo_0503p_45_Pamela_a2.jpg _MG_3509_a.jpg)
・・・
「私の大切なものは『花』です.
花は日常に彩りをくれます.」


コロンビアでは、
バラ、カーネーション、菊、かすみ草など
様々な種類の花が生産されており、
そのほとんどがアメリカや日本に輸出されています。
四季の寒暖の差は無いのに、
日中の気温差は大きいという
コロンビアの特徴的な気候が
通年で農業ができる要因のひとつです。

そしてコロンビア西部を南北に分ける
マグダレナ川が土壌を肥沃にするため
カカオ,コーヒー,果樹などの栽培も盛んです.

しかし一方で、コーヒー農家は
家族経営の小規模農家が多いため、
世界的にコーヒーの価格が落ちている現在、
コロンビアのコーヒー農家は
経営の危機に瀕しています。

一方で、食料需要の増加に伴う
プランテーション
(主に外国の大企業による大規模な農場)
の拡大は、コロンビアの農民から
生来の土地を奪っています。
土地を奪われた農民のなかには
麻薬の原料となる、コカの
栽培や流通に関わってしまう人も
少なくありません。

もとよりコカは強い植物で、
どんな土地でも栽培でき、
季節を選ばず1年に何度も
収穫できるのが特徴です。
そして、コカを求めて悪い組織の買い手が
山岳地帯にも足を運んできてくれるため
市場や流通の心配がない、というのも
農家がコカ栽培を止められない理由の一つです。

コカを初めとする、麻薬の栽培は
生活が苦しい人々にとって
簡単に収入を得られる手段なのです。
このため、政府やNGOが
人々に麻薬の栽培を止めさせて、
普通の農作物で収入を得るように
指導しようとしても、
うまくいかないのです。

また大きな船舶が航行可能な
マグダレナ川の存在が
コカインの流通を活発にしています。
こうして、コカイン産業に関わる組織が
マグダレナ川流域に集まることとなり、
かつての肥沃な農地が
現在ではコカイン産業の中心地になっています。

そして、コカ産業に関わる組織の
勢力争いや土地の所有権をめぐる争いにより
この地域に武器や地雷が持ち込まれています。
長期的に見たとき、コカ栽培が
コロンビア国民の身の安全や健康を
脅かしていることは明らかですが、
コカ栽培が彼らの明日の生活を
保障していることは事実です。

それだけにコロンビアにおける
コカ栽培の問題は、
解決の糸口が未だ見えない課題です。
コロンビアからコカ栽培をなくすための努力が
今まで取られてこなかったわけではありません。

21世紀はじめには、
米軍とコロンビア政府軍によって
コカを初めとする不法作物の駆除を目的とした
除草剤の空中散布が行われました。
しかし、この試みは失敗に終わりました。
コカ以外の植物が枯らされただけでなく、
河川、土壌、動物や子どもにまで
除草剤による汚染の影響が出たのです。

除草剤の散布は
農村部や山岳地帯に住む人々の
生活基盤を全て奪ってしまう結果となりました。
この絶望に立ち向かおうとしている
コロンビア人も存在します.

コロンビアの億万長者の間には
既に社会貢献の意識が芽生えており,
コロンビアを誰よりもよく知る
彼ら自身がこの国を救おうとしています.
例えば,マリオ・サント・ドミンゴ財団は
ローカルNGOとして
職業訓練施設の整備や,
海の環境保護などに尽力しています.
・・・
「私の大切なものは『外国と繋がること』です。
貿易によって経済が豊かになるだけでなく、
多様な価値観や文化に触れると
それが刺激になって、
毎日の生活や勉強さえ楽しくなります。」


コロンビアは、その地理的好条件によって
経済力を飛躍的に伸ばしてきました。
太平洋と大西洋に接しているため
輸出入が活発に行われています。
また、世界最大の消費国である
アメリカに近いのが特徴です。
しかし、コロンビアに入ってくるものが
いつも良いものとは限らないのです。

かつてベトナム戦争に参加したアメリカ兵が
恐怖を紛らわすために用いたのが
コカインであるとも言われ、
それが、コロンビアの麻薬産業が
おこるきっかけになりました。
そしてベトナムから帰った若者が
アメリカに持ち帰った麻薬文化が
コロンビアの若者に伝わったとも言われています。

・・・
「私の大切なものは『力』です。
力さえあれば、どんな恐怖にも
屈しないで立ち向かえるからです。」


コロンビアは今日に至るまで、
軍事援助や武器の多くを
アメリカに頼ってきました。
コロンビア政府軍は、
コロンビアの共産主義化を防ぐために、
アメリカからの軍事資金や訓練の
援助を受けてきました。
また、政府軍に対抗する勢力も
アメリカから持ち込まれる武器によって
力をつけてきました。

エメラルド、麻薬、土地など
様々な利権を巡る対立は
コロンビアに40年に及ぶ
内戦をもたらしました。
緊迫した国内情勢によって
家族離散を強いられ、
生き延びるために兵士となる道を選んだ
子どもも数多くいたことでしょう。

一時は兵士の4人に1人が
子ども兵だったと言われています。

兵士となった子どもたちは
教育機会を失ったことでしょう。
また、内戦が人々の暮らす町にまで及ぶと
校舎を武装勢力に奪われ、
児童は戦闘の犠牲となることもありました。

・・・
「今の私たちのとって大切なことは
『武器をなくすこと』です。
武器は人を傷つけ、
また傷つけられた人を
新たに暴力へと
駆り立てる可能性があります。」


21世紀に入り治安は回復傾向にありますが、
現在でも地方有力者が
自警団として戦闘員を利用することがあり、
政府もこれを認めています。
しかし、他の勢力との抗争が激しくなると
一般市民が戦闘に巻き込まれることも
充分に考えられます。

また、生活に困った家庭の子どもが
自警団にリクルートされ
武器を手にすることも考えられます。

武力が武力を抑えるという構造を
根本から変えない限り
子ども兵や武器輸入の問題は
コロンビアから消えないでしょう。
・・・
「私の大切なものは『真実』です。
真実を見誤ったり、真実から目をそらしたりすると、
善悪を判断する力が鈍くなります。」


コロンビアでは、 マスメディアが
政府や反政府組織を批判することは一応、可能です。
しかし、 武装組織が
取材中の報道機関を妨害したり
世論に影響力を持つ高名なジャーナリストを
脅迫したり、 拘束したりすることが
コロンビアでは起こっています。

コロンビアで報道行為を脅かされた
ジャーナリストは、2009年には
200人以上を数えました。
武装組織に対して批判的な意見を言うことは
コロンビアでは勇気のいることなのです。

しかしだからこそ、
コロンビアのジャーナリストは
使命感に燃えるのです。
彼らは武器を用いずに、
人間に潜む悪に立ち向かっているのです。

果敢な挑戦者の一人に
エルビン・オジョスがいます。
彼は1990 年代から、
誘拐被害者が家族の存在を励みにできるように、
家族の声を放送するラジオ番組を製作してきました。
この番組は、 選挙活動中に誘拐された
大統領候補の解放にも貢献し、
誘拐が横行しているコロンビアの現状に
世界を注目させました。

数々の成果を上げたオジョスですが、
自身にも生命の危機が迫ってきたため、
彼は2009 年に亡命しました。
彼のようなジャーナリストが今も
約500 局のラジオ局と61 紙の新聞を以て
コロンビアの自由のために戦っているのです。

コロンビアで今も戦っている『武器なき兵士』
たちのために、
外国にいる私たちができることは、
勇気あるジャーナリストが
発する情報を見逃さないことではないでしょうか。
・・・
「私の大切なものは『国土』です。
なぜなら、鉱物や化石燃料をたくさん
産み出してくれるからです。
鉱物や化石燃料を必要とする人が
世界中にいるので
産出国の私たちの生活が潤います。」


コロンビアは、
金、エメラルドなどの鉱物や
石炭、石油などのエネルギー資源に
恵まれています。
なかでも、エメラルドの産出量は世界最大で
産出シェアは世界で60%を占めます。

伝説によると、エメラルドは
『不貞の罰で岩に変えられた女王フナの流した涙』
であると言われています。
伝説では、女王フナを誘惑したのは
金髪で青い目の男と伝えられており、
16世紀のスペイン植民地化や
石油利権を狙うアメリカ企業の進出を
想起させます。

また、エメラルドの採掘権をめぐる争いが
武装組織、警察、政治家を巻き込んだ抗争に
発展しており、国内の治安を悪化させています。
外国に住む私たちも、
コロンビアの資源を消費する限り、
コロンビアの治安に対して
責任を負わなければならないのです。

・・・
「私の大切なものは『エネルギー』です。
自然が与えてくれるエネルギーがなければ、
動物も植物も人間も、
生きていくことは出来ません。」


コロンビアでは、
水力発電への依存度が高いため、
気候の影響を受け易く、
電力供給が安定していません。

そこで現在、採掘が進んでいる
石炭やガスによる火力発電への
移行が進められています。
しかし、いずれの発電方法でも
武装組織による送電システムからの
『盗電』などの問題が解決されなければ、
コロンビアの電気事情は良くならないでしょう。

石炭は重要な輸出資源です。
コロンビア政府は最近、
石炭の対アジア(特に対中国)輸出
に力を入れているようです。
ただし、コロンビア政府は経済発展にばかり
気をとられているようにも見えます。

コロンビアは2010年にノーベル賞を受賞した
劉暁波の授賞式典に欠席した国の一つです。
劉暁波は、中国政府が国の民主化運動を
弾圧していることに対して
反発する活動をしています。
つまり、コロンビア政府は
民主化を弾圧している中国政府の
肩を持ったことになります。

おそらくコロンビア政府は
ひとりの民主化運動の活動家の業績よりも
対中貿易の利益を重く見たのでしょう。
コロンビア政府には、
自国の経済発展のみにとらわれず、
世界中の人が自由で快適に暮らせるように
いっそうの努力を求めたいとおもいます。

・・・
・・・
「僕の大切なものは『女性』です。
その美しさは、神様の創造物の中でも
最高傑作のひとつだと思います。」


コロンビアは、 国際的なミス・コンテストで
毎年、 多数の受賞者を輩出しています。

コロンビアに美女が生まれやすいのは、
人種の多様性に富むからだとも言われています。
また、コロンビアの女の子は、
専門のカルチャースクールに通って
美しい姿勢や歩き方を熱心に勉強します。
ミス・コンテストを開催する小学校も
多いようです。

このように、 美意識を養う環境が整っているので、
美少女として生まれた女児は
年齢と経験を重ねて、
さらなる変貌を遂げるのです。
そして、美の秘訣は
母親から娘へ、そして孫娘へ
受け継がれているのです。

「私の大切なものは、
この国の美しいもの全てです。」


美意識の高さに伴って
コロンビアの医療は、
美容メディカルの技術が発展しています。
比較的低価格で高水準の美容整形を受けられるので、
アメリカやスペインからも多くの女性が
美を求めてコロンビアに訪れます。
美しさへの執念は、
医療技術の向上や人の流れをもたらしてくれます。
しかし、コロンビアでは
美しさゆえに犯罪に加担してしまうことがあります。

2010 年には、麻薬密輸組織の主犯格として
コロンビア国籍の女性モデルが
国際指名手配され、
アルゼンチンで逮捕されました。
例えば、コロンビア特産品のPRのために
ミス・コンテストのクイーンが
頻繁に外国とコロンビアを行き来するのは
珍しくありませんが、
麻薬密輸組織はそこに目をつけたのです。

このニュースによって
女性モデルがその立場を利用して、
麻薬や武器の運び屋を
引き受けることがあるということを
外国にいる私たちも知ることとなりました。

麻薬や武器の流通は、
コロンビアだけの問題ではありません。
なぜなら、世界中の健康や安全に
関わる問題だからです。
外国にいる私たちは
コロンビアの女性に内面の美しさを
求めていく必要があるでしょう。

……
「私の大切なものは『音楽』です。
音楽は、コカインと違って、
興奮と安らぎを健康的に享受させてくれます。」


世界で活躍するロックミュージシャン、 フアネス
(本名:フアン・エステバン・アリスティサバル・バスケス)
はNGO フンダシオン・ミ・サングレを設立し、
対人地雷被害者の支援を行なっています。

彼は、 日本政府が設立した地雷被害者向け
リハビリテーションセンターの落成式に
政府関係者と共に出席しました。
シンガーのシャキーラ
(本名:シャキーラ・イザベル・メバラク・リポル)
はNGO フンダシオン・ピエス・デスカルソスを立ち上げ、
国内避難民の支援や教育支援を行なっています。

音楽はそれ自体素晴らしいものですが、
コロンビアでは音楽が
身体の安全や健康を促すための
源になっているのです。

・・・
「私の大切なものは『誠実であること』です。
誠実でなければ、人は信用されないからです。」


コロンビアから
麻薬産業や武装勢力を
一掃できない原因の一つに、
政府にも彼らの力が及んでいることがあげられます。

私が想像するに、悪徳な政治家は、
麻薬組織などから受け取る賄賂で、
私腹を肥やすと同時に
麻薬の運搬に便利なインフラの建設を
推し進めてきたのだと考えられます。

そのような取り引きに加担しない
誠実な政治家がいたとしても、
悪い組織が放っておかなかったと
私は思います。
おそらく誘拐して説得するか
あるいは殺すことで
誠実な有力者を黙らせてきたと
想像できます。
コロンビアは、現在でも
「誘拐件数世界第一位」
という汚名で世界に知られているからです。

21世紀以降、コロンビアで
政治的理由により「失踪」した人は
推定でも1500人以上にのぼります。
また、麻薬産業や武装勢力の
悪行が法廷に届いたとしても、
判事が報復を恐れて
訴訟を却下していると言われています。

麻薬と暴力の問題は、
現在でも政・官・財の世界に
深く根をはっているのです。
・・・
・・・
まだ幼い少女は、答えました。
「私の大切なものは『家族』です。」


少女の父は言いました。
「私たちは、まず家族を作り、
何組かの家族がコミュニティーを形成し、
その集合が都市となり、国となり、
世界を構成しています。」

20世紀末まで約40年続いた
政府軍、
極右系民兵組織、
反政府組織、
そして麻薬組織などによる
武力抗争は、コロンビアに多数の
国内避難民を生みました。
かつて、家族と離れ離れになった人たちが
21世紀に入ってようやく
安住の地を手に入れようとしています。

20世紀末には350万人とも言われた
国内避難民が、昨今では
徐々に元の土地に戻れたり、
あるいは
新たな生活拠点を見つけたりしているようです。

コロンビアの国民が一刻も早く、
武力に怯えることなく
家族と暮らせるよう、
私たちも外国から
働きかけていきたいものです。

・・・
「私の大切なものは『道徳』です。
最低限の道徳さえ守っていれば
争いがなくなり、
生活がもっと安全で快適になります。」


コロンビア国民のほとんどは現在でも
カトリック信者だと言われています。
しかし現在のコロンビアは、
道徳や倫理を国民が共有しているとは
言いがたい状況です。

長期にわたる内戦が終わり
治安が安定してきても
一度失われた道徳を元通りにすることは
難しいようです。
更なる発展をめざすコロンビアにとって
道徳の欠如を埋める、時代に見合った
新たな倫理の構築が急務ではないかと、
私は思います。

・・・
・・・
絵と写真を集めた人:
山本敏晴(2005年)
画像データを編集し、文章を書いた人:
小野 明日美
編集日:
2012年3月13日
監修・校正:
山本敏晴
企画・製作:
NPO法人・宇宙船地球号
http://www.ets-org.jp/