タイ王国は日本の約1.4倍の国土と約6500万人の人口を有し、
カンボジア、ミャンマー、ラオス、マレーシアと国境を接しています。

人口の3分の1以上が都市部に住んでおり、中でも首都圏のバンコクには
タイの人口の約13%を占める約800万人が住んでいます。
東南アジアの中央に位置するタイ王国は、
世界遺産やプーケット島など世界有数のリゾートに恵まれ、
世界中からたくさんの旅行者が訪れています。
また、友好的な国民性から「微笑みの国」と言われています。

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![a20[1].gif](http://ets-org.sakura.ne.jp/sblo_files/painting/image/a205B15D-thumbnail2.gif)
(タイの国旗 外務省ホームページより)
ブルーは王室、白は宗教(仏教)、
赤は王室と仏教を敬愛する
国民の信頼・信仰を表わしています。
タイの人々は王室と国旗に敬愛を持っています。

町では国旗と黄色が溢れています。
なぜ、黄色かというと 国王が月曜日生まれだからです。

タイでは曜日によって色が決まっています。
日曜日 赤
月曜日 黄色
火曜日 桃色
水曜日 緑
木曜日 オレンジ色
金曜日 青
土曜日 紫色
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「私の大切なものは 海で仕事をすることです」
![IMG_7443[1].jpg](http://ets-org.sakura.ne.jp/sblo_files/painting/image/IMG_74435B15D-thumbnail2.jpg)
独特なハーブの香りとスパイシーな味付けのタイ料理は
日本でも人気があります。
「トムヤムクン」は世界三大スープの一つと言われています。
「トム」は煮る、「ヤム」は和(あ)える、「クン」はエビ。

日本は、毎年タイから約4500億円の
農林水産物を輸入しています。
日本人は世界で一番エビを食べる国民と言われていますが、
日本で消費されるエビの約90%が外国から輸入されたものです。
そのうち、タイから輸入されているエビは約20%で、第一位です。
あなたが食べたエビも、タイから輸入されたものかもしれません。
エビの養殖は、タイの主要な産業のひとつです。
しかし、エビの養殖のために脂肪分や栄養剤を含む飼料や、
病気を防ぐための抗生物質を投入するため、水と土地がひどく汚染されてしまい、
田んぼや畑で農作物が育たなくなってしまいます。
ブラックタイガー(エビの品種)の養殖に最適な環境は、
海水と淡水の混ざり合う場所です。
そこには、マングローブ林が生い茂っています。
マングローブは、魚たちにとって
産卵するためなどの生活に必要な場所なのですが、
人々はエビを養殖するために、
マングローブを伐採しているのです。
エビの養殖によって、土壌汚染、森林伐採などの
環境問題を起こす側面もあります。
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2011年に記録的な大洪水が起こり、たくさんの人が亡くなりました。
例年8月末で終わるはずの雨季が11月まで続き、大きな台風が幾つも上陸しました。
これは、地球温暖化による異常気象と言われています。
しかし、それだけではありません。
森林破壊による熱帯雨林の急速な減少も、大洪水の原因となっています。

タイは世界有数の木材輸出国です。
さらに、焼畑農業やエビの養殖、住宅や工場の建設などのために、
急速に森林伐採が進み、深刻な問題になっています。
徐々に雨水を吸収する木がなくなることで、
川に一度に流れる水が増えてしまいます。
そして、一度にたくさんの雨が降ると・・・
川の水が溢れてしまい、洪水が起こるのです。
洪水による被害総面積は、四国の面積とほぼ同じくらいです。
JICAは洪水で被害にあった人々のために日本から医師や看護師を派遣しました。
また、タイの人々が森を管理していけるように教育支援も行っています。
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「私の大切なものは車です。」
タイでは、近年急速に経済成長が進んでおり、
特に自動車産業が盛んで、
トヨタ、ホンダ、スズキをはじめ、たくさんの日本企業の工場があります。
洪水による生産停止は、日本経済に大きな打撃を与えました。
(ここに挿入する絵と写真を現在、検討中です。)
(参考 IMG_7959.JPG Thailand_Draw_009_Pikun.JPG
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「私の大切なものは 友達です。」
タイは多民族国家です。
約80%を占めるタイ族(シャム族など)、
華僑約10%、マレー系・カレン族など
約20種少数民族(約10%)から構成されています。
この多民族国家であることが、タイに多くの問題を生じさせています。
ます、第一に挙げられるのは、
タイの深南部(南にある細長い半島)に住む
マレー系の人々が独立しようとしている問題です。
深南部は14世紀から19世紀まで、パタニ王国という独立した国でした。
タイは仏教の国ですが、マレー系の人々はイスラム教を信仰しています。
マレー系の人々は、独立のために過激な暴動を起こし、政府と対立しています。
タイ政府も武力によって弾圧しようとしますが、
それよって亡くなった人や逮捕された人たちがいます。
米NGO「ヒューマン・ライツ・ファースト」は、
タイ政府のとった行動は、「人権侵害」だと批判しています。
以上のように、独立しようとするマレー系の人も、
それを防ごうとするタイ政府も、
ともに人道的に問題のある行動を起こしています。

ここで、お隣の国ミャンマーの話も絡んできますが、
ミャンマーでは、1949年以降ミャンマー政府軍とカレン族などの山岳民族の間で
紛争が続いているため、多くの人たちが難民となって
タイ側へ逃れてきています。
ミャンマーでは、
1949年以来ミャンマー政府軍と山岳民族の間で
紛争が続いているため、
多くの人たちが難民キャンプで長期にわたり
避難生活を続けています。

さて、タイ北西部・ミャンマーとの国境に暮らすカレン族は、
銀細工やバッグなどの工芸品を作って生活しています。
カレン族の銀細工は、非常にファッション性が高く、
日本でも大都市などで売られています。
フェアトレードの会社の1つである、COCOWAでは、
カレン族のシルバーアクセサリーを
インターネットで販売しています。
このように
社会的に弱い立場にある人々の生産した商品を、
適切な価格で取り引きし、
途上国の人々の生活を支援する仕組みを
フェアトレード(公平貿易)といいます。
フェアトレードによって生活に必要な収入を得ることができれば、
人々は安定した生活を送ることができるかもしれません。
UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)によって難民と認定された人々は
タイ政府や他の国際機関、
現地NGO(非政府組織、民間の国際協力団体)、一般の企業から、
食糧、水、医療、教育、安全などの支援を受けています。
ユニクロも、難民の人々に衣料品を提供しています。
山岳民族の伝統的な生活基盤は自給自足の焼畑農業です。
しかし、1980年代後半から
政府が環境破壊にあたるとして、焼畑農業を禁止してしまいました。
焼き畑農業ができなくなった人々は、
仕事を求めて都会に行きますが、
言葉の壁や差別から仕事を見つけることは困難でした。
そうした人々の中には、生活のために売春をして、
HIV(エイズを発症させるウィルス)に感染してしまった人もいます。
タイでは、90年代にHIV/エイズが大流行しましたが、
それに巻き込まれてしまうことになってしまったのです。
なお、バンコクには、アジア最大の歓楽街と言われる『パッポン通り』があります。
タイはベトナム戦争中にアメリカ兵の保養地として観光業が栄え、
風俗産業も発達したと言われています。
このような場所にいるセックスワーカー(売春婦など)の多くが、
HIV/エイズに感染してしまったのです。
医療人類学者の大森絹子さんがタイのチェンマイに創った養護施設
「希望の家」では、
エイズや麻薬中毒、貧困で親を亡くした山岳民族の子どもたちが暮らしています。
また、そこで教育も行っています。
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日本では、
毎年HIV/エイズの新規感染者数が増え続けていますが、
タイは、HIV/エイズの新規感染者の削減に成功した数少ない国です。
売春施設にコンドームを設置する「100%コンドームキャンペーン」や、
同性愛者やセックスワーカーなど「感染するリスクの高い人々」への予防教育を
行いました。
しかし、未だにHIV感染者への偏見・差別は残っています。
そして、たくさんの人がエイズを発症して亡くなりました。
親がエイズで亡くなってしまったエイズ孤児たちのために作られた施設があります。
その施設の一つがカメリアン社会センター(The Camillian Social Center Rayong)です。
ここでは、大人のHIV陽性者が農業をしたり、
工芸品を製作して生活の糧(かて)にしています。
また、エイズ患者のためのホスピスもあります。
HIVは、次のような方法で感染します。
@同じ注射器の針を使い回して予防接種をする、輸血をする等 「血液による感染」
Aコンドームを使わずに性行為をする。
B出産の前後に母から子へ感染する「母子感染」
なお、唾液や涙、汗などから感染することはないので、
日常生活を共にしても、正しい知識を持っていれば感染することはありません。

また、現在では、HIVに感染しても薬を飲み続けることで、
エイズの発症を遅らせ、普通の生活を送ることが出来ます。
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このように、タイには経済発展の裏に隠された環境破壊や、
少数民族の問題、HIV/エイズの問題などがありますが、
そうした問題が少しでも解決できるよう
私もこれから協力していきたいと思っています。
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絵と写真を集めた人:
福田佳代子
森田幸子
羽金杏子
藤井達也
二見茜
画像データを編集し、文章を書いた人:
二見茜
編集完了日:
2012年2月12日
監修・校正:
山本敏晴
企画・製作:
NPO法人・宇宙船地球号
http://www.ets-org.jp/