2012年01月23日

モロッコ Morocco

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モロッコ王国、通称モロッコはアフリカ大陸北方の国の中で唯一の王国です。
アフリカ大陸の北西端に位置しており、
面積は西サハラを除いて44.6万平方キロメートル。
日本のおよそ1.2倍に相当します。

人口は3,199万人(2009年時点)で、日本の4分の1程度です。
首都はラバトで、民族はアラブ人、ベルベル人、
そして両者の混血の人々が暮らしています。


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公用語はアラビア語とフランス語です。
フランス語は、モロッコが昔
フランスの保護国であったという歴史に関係しています。


「あなたの大切なものはなんですか?」


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「ぼくの大切なものはモスクです。
イスラム教徒としてお祈りはかかせません。」


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国が定めている宗教はイスラム教で、
国民の99%がイスラム教のスンニ派です。
しかし、国がキリスト教もユダヤ教も禁止をしていないことから、
穏健的なイスラム国家として、イスラエルとも良好な関係を維持しており、
中東和平に大きな役割を果たしています。

また、世界遺産でもあり、国内外から多くの観光客が集まる都市、
マラケシュの旧市街には、クトゥビーヤ・モスクという
市内で最も大きく、有名なモスクがあります。
これらの歴史的な建物は、国内経済の中心に観光業をおいているモロッコにとって
とても重要な存在になっています。


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産業の面では水産業とリンを中心とする鉱業がさかんです。
この両方で日本政府はモロッコの支援をしてきました。
特に水産業では、水産物の加工や
海運に関わる船員の教育などに力を入れてきました。

こうした取り組みは、モロッコの技術向上に限らず
日本との良好な外交関係作りに大きく影響を与えてきました。


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また、モロッコは日本から学んだ
漁業や水産物加工の技術を
更に他のアフリカ諸国に教えてあげています。



「あなたの大切なものはなんですか?」


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「わたしの大切なものは車です。
お買い物に行くのに便利だからです。」


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モロッコは日本と同じく、石油や天然ガスなどのを持たない国です。
そのため、エネルギー需要の95%を輸入に頼っています。
一方で、経済発展によりエネルギー需要は年々増してきています。

そこで、モロッコ政府はエネルギー源の多様化や
エネルギー依存の軽減等を目指して、新しいエネルギー資源を求めており、
太陽光発電に積極的に着手し始めました。


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これを受け、世界銀行はモロッコの太陽光発電プロジェクトに対する
4,320万ドルの融資を承認しました。

また、この計画の先駆けとなったのは、平成21年におこなわれた
日本のODAによる「太陽光を活用したクリーンエネルギー導入計画」です。
今後も、低炭素社会の実現を目指すため、日本の優れた環境関連技術を
活用し、このような取組の支援が進められようとしています。


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順調な経済発展をしているモロッコですが
その理由の1つとして欧州市場へのアクセス(地理的な近さ)の良さがあげられます。

特にフランスとは、かつてモロッコがフランスの保護領だったという
歴史的な関わりから、モロッコにとって最大の貿易相手国になっています。
モロッコは、経済のグローバル化を進めているのです。



「あなたの大切なものはなんですか?」


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「わたしの大切なものは道路です。」



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経済のグローバル化は進んでいますが、それを阻む現状もあります。
モロッコは地方の高速道路や鉄道網の整備といった
基幹インフラ整備が不十分なのです。

そのため、国内外での人の移動やモノの流通が
うまくいっておりません。
またこの問題は、地域間の格差を広げる要因ともなっており、
バランスのとれた経済・産業促進が大きな課題となっています。


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そこで毎年、ローカルNGOが地方インフラの整備にあたっています。
このローカルNGOの活動には「草の根・人間の安全保障無償資金協力」
の制度として、日本は在外公館が中心となって資金協力を行っています。



「あなたの大切なものはなんですか?」


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「わたしの大切なものは学校です。
みんなで勉強するのが好きです。」


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地域格差があるのは経済面だけではありません。
モロッコでは、教育面でも大きな格差があるのです。
例えば地方の識字率の低さがそれを物語っています。
以下は、モロッコの識字率のデータです。

全国平均→57%
都市→71%
地方→40%
※2004年時点

これらの識字率の低さは年々改善されていっていますが
いぜんとして地域格差は埋まらないままです。

これは、社会・経済的格差によるものです。
人口の約14%が貧困にあえぐモロッコでは
そのしわ寄せが、児童労働などによって
子どもにまでのしかかっているのです。


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また、就学率における格差も大きいです。
都市部を中心とする富裕層は、大卒であるのが当たり前ですが
それに対し、地方での就学状況はけして良くありません。
モロッコの小学校入学率は90%を超えるものの
6年生になるまでには10人に4人は小学校をやめてしまう現状です。
その理由としては、学校教育の質の低さにあると言われています。


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そこで、この現状を少しでも改善しようとユニセフは
【子どもにやさしい学校】づくりを支援しています。

この支援は、学校と地域が一体になり
自らで学校教育の問題点と、その改善方法を考え
計画・実行していくことをを促すものです。

例えば、文字を理解できないことが学校をやめてしまう
理由の1つにあげられ、
学校や親が自ら動き、改善をはかっている学校もあります。


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ただ支援をするのではなく
自立するための手段を教える……
そんなカタチの支援が今、おこなわれているのです。


「あなたの大切なものはなんですか?」


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「わたしの大切なものは病院です。」


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経済、教育と並んで地域格差が大きいのが医療です。
モロッコは妊産婦死亡率が高い国で、全国平均が10万人中227人と
隣国チュニジアの平均45人と比べるとその悲惨さがわかります。

特に地方村落部の死亡率は高く、都市部と比べ1.5倍も多いという現状です。
その最大の理由として、地方の公的医療機関の設備
技術水準の低さがあげられます。


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そこで、対策として作られたのが「女性健康手帳」です。
これは、日本政府の無償資金協力によって来日したモロッコ人医師が
日本の母子健康手帳を参考にし、モロッコ女性のための健康手帳を
作りたいという報告書を提出したのがはじまりでした。

この報告書に保健省大臣が賛同したのを機会に、日本の専門家と
モロッコ人研修員たちが共同で原案を作成しました。
更にこの原案によってUNFPA(国連人口基金)から200万円の資金を獲得し
半年後には女性健康手帳の完成にいたりました。


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この女性健康手帳には、妊婦の血液型や妊娠中の経過などの情報が
記録されており、輸血対応の迅速化や問題の早期発見等
妊産婦ケアの質の向上につながりました。
また、地方では数の足りない助産師の負担の軽減など
具体的改善点がすでにいくつもあげられています。



「あなたの大切なものはなんですか?」


「ぼくの大切なものは国王です。
貧困のない国にしてくれるのを期待してます。」

(ここに挿入する絵と写真を現在、検討中です。)
(参考 Moro_17_a.jpg 17_omaru_11_a.jpg)





これまでに紹介した経済、教育、医療、あらゆる地域格差の是正のために
1999年に即位したモハメット6世国王は
貧困撲滅、失業・雇用等の社会問題や
教育問題といった国民に軸足を置いた政策をかかげました。

今、モロッコでは、この国民の立場に立つことのできる
国王に期待の目がそそがれています。


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また、国王は地域格差だけでなく
男女格差の改善をするような方針も打ち出しています。

しかし、他の中東諸国と比べると、その格差は次第に縮まりつつあります。
特に1993年にモロッコ政府が「女性差別撤廃条約」に批准したことが
大きく、また、1990年以降女性の不利な立場を改善するために
憲法の改正などもおこなっています。



「あなたの大切なものはなんですか?」


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「わたしの大切なものは技術です。
美しい織物のマットを作れるようになりたいです。」


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進みつつある女性の社会進出ですが、
それでも農村部の女性の就業率は低く、問題になっています。
ここでも地域格差があるのです。

そこで、彼女たちが持つ伝統的な技術で作られた商品を
公正な価格で買い取り、販売するフェアトレードの動きがいくつもあります。


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日本のフェアトレードショップ「サハラへの道」も
ベルベル族の人々の作った織物のマットの販売を通し
彼女たち自立を支援しているお店の一つです。


「あなたの大切なものはなんですか?」


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「わたしの大切なものは木です。」


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サハラ砂漠を持つモロッコで忘れてはならないのは、
降雨量が少ないがゆえの砂漠化問題です。
この砂漠化を防ぐのに重要な役割を担っているのが
乾燥に強いアルガンツリーです。アルガンツリーはサハラ砂漠で唯一、
自生している植物で、かつてはモロッコ全土に生息していました。
しかしこのアルガンツリーも開墾のための伐採で数が減少しています。


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そこで、活動の利益の一部をアルガンツリーの
植林活動に使用している組合があります。
モロッコの女性達による、タルガニン生産協同組合です。
アルガンツリーからとれるアルガンオイルを生産して利益を得ており、
この活動は、女性の社会的地位向上を促すものになっているのと同時に
得られた利益の一部を、女性達の職業・識字教育などにも使用しています。


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また、日本の企業である株式会社ニュートリションアクトは
タルガニン生産協同組合から購入したアルガンオイルを使った
化粧品を販売し、間接的に砂漠化防止やモロッコの女性を支援しています。

アルガンツリーを守ることは地球の砂漠化を防ぐと共に、
女性の社会進出と雇用創出の大きな役割も担っているのです。



「あなたの大切なものはなんですか?」


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「わたしの大切なものは花のある平和なモロッコです。」


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最後に、サハラ砂漠と関連して、モロッコにとって
大きな問題となっているのは西サハラ問題です。

スペイン統治後の1975年、西サハラと国境を接するモロッコとモーリタニアが
西サハラの分割統治を始めた所、それに対抗して独立を目指す
「ポリサリオ戦線」がサハラ・アラブ民主共和国の樹立を宣言しました。


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それを引き金に、モーリタニアは領有権を放棄しましたが
それを機会にモロッコは西サハラ全域を占領し、
モロッコとポリサリオ戦線の対立は激化。激しい闘争が行われました。

1988年に国連の仲介で、独立かモロッコに帰属か
住民投票で決するという和平案でモロッコとポリサリオ戦線は
停戦に合意したものの、未だに住民投票は行われず、
膠着状態が続いており、この問題は未解決のままです。


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また、西サハラには「砂の壁」と呼ばれる2000キロにも及ぶ
モロッコ軍がサハラ砂漠の砂を高さ数メートルに積み上げて作った
西サハラ領域内を南北に貫く軍事的な境界線があります。
この周辺は鉄条網と多くの地雷で防御されており
これらによって負傷・死亡する人々が絶えません。

この問題が解決し、西サハラの人々に一刻も早く
平和が訪れることを筆者は願います。


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このように、貧困問題や地域格差、男女格差、西サハラ問題など
まだ多くの問題を抱えているモロッコですが、
それらの問題は他国の協力を得て、少しずつ解決に向かっています。
そしてそれは、経済発展にも繋がっているのです。

モロッコがこれから、独自でアフリカ諸国を支援するような
自立した国になればいいなと筆者は思います。





・・・
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絵と写真を集めた人:
森 やよい(2007年)

画像データを編集し、文章を書いた人:
渡部 加奈

編集完了日:
2012年1月30日

監修・校正:
山本敏晴

企画・製作:
NPO法人・宇宙船地球号
http://www.ets-org.jp/

上記に掲載された写真のうち、
人物が写っていない写真の一部は、
以下のサイトから提供されたものもあります。
トリップアドバイザー
http://www.tripadvisor.jp/

また、上記に掲載された地図は
以下の無料画像サイトから提供されました。
白地図専門店
http://www.freemap.jp/

posted by お絵描きイベント at 20:20| 日記