2012年01月10日

ジブチ Djibouti

ジブチ共和国は、
アフリカ大陸の北東に位置する国です。

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この国は、アフリカ大陸と、ヨーロッパ、中東・アジアを結んだ、
地理的にも政治的にも重要な場所にあります。

国の大きさは、
日本の四国と同じくらいです。

「あなたの大切なものは何ですか?」

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「サンダルです。
ジブチは毎日暑いので、サンダルが欠かせません。」
この絵を描いたのは、Souleiman、14歳の男の子です。

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国土の半分は砂漠地帯で、とても乾燥しています。
最高気温は50℃近くにもなり、
地球で一番暑い場所の1つといわれています。
雨はなかなか降らず、干ばつの多い国です。

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人口は約80万人で(日本の東京都は1300万人です)、
そのうちの半数がソマリア系のイッサ族、
4割近くがエチオピア系のアファール族です。

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(ジブチ共和国の国旗:外務省ホームページより)

国旗の青い部分はイッサ族、緑の部分はアファール族を、
白い部分は2つの民族が平等であること、
そして、赤い星は国の独立をあらわしています。

平均寿命は56歳です。
国民はアラビア語とフランス語を話し、
ほとんどの人がイスラム教を信じています。

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ジブチは、アフリカ大陸の東側海沿いにあるエチオピアやケニア、
ソマリアなどの国とともに「アフリカの角」と呼ばれています。
(世界地図で見ると、この地域がサイの角に似た形をしていることから、
このように人々が呼ぶようになりました)

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(アフリカ大陸:外務省ホームページより)

「アフリカの角」地域では、
異なる民族や宗教が集まっているため、紛争が多く発生しています。
そのなかで、ジブチは多くの国と良い関係を築き、
落ち着いた政治をしているので、
「アフリカの角」を安定させる存在です。



・・・

「あなたの大切なものは何ですか?」

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「ジブチのゲレ大統領です。僕と同じ部族だから誇りに思います。」
この絵を描いたのは、Moussa、11歳の男の子です。

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19世紀、ソマリア系のイッサ族とエチオピア系のアファール族が
フランスにこの土地を受け渡しました。

フランスがこの地域を植民地とし、
フランス領ソマリランドとして統治する中、
イッサ族とアファール族は対立しました。
対立関係はおさまらず、その後はこの土地の名を、
フランス領アファール・イッサ(それぞれの部族名)
に変えました。

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第二次世界大戦後、アフリカ大陸の国が続々と独立するところ、
部族対立が原因で独立できなかった
フランス領アファール・イッサでしたが、
1977年にイッサ族出身の大統領のもと、
ジブチ共和国が誕生しました。

ところが、部族同士の対立はまだ続いていました。
1990年代に入ると、
政府側の軍と、政府に反対するアファール族の軍が
内戦をはじめました。

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国内紛争は3年にわたって続きましたが、
2001年に、両者は最終的な和解をして内戦が終わりました。
2011年にゲレ大統領が3度目の当選をし、
現在に至っています。



・・・

「あなたの大切なものは何ですか?」

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「ラクダとヤギです。僕たちの生活に必要なものを与えてくれます。
ラクダは荷物を運んでくれます。ヤギは僕たちの食料となるんです。」
この絵を描いたのは、Mohamed、11歳の男の子です。

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ジブチは国民の多くが貧困状況にあり、問題となっています。
アメリカ中央情報局によれば、
2007年の失業率は6割にもおよび、
国民の半分以上が職につけない状態でした。

ジブチ政府は国の経済を立て直すために、開発計画を立て、
これをもとにして経済政策を実施しています。
政府は、主に以下の4つをもとにして政策を行なっています。

1.国としての経済的競争力を強めることと、
  経済の成長を長い期間つづけること
2.優秀な人材を育てること、基本的な生活力を上げること、
  環境を守ること
3.貧困をなくすことと、社会的に弱い立場の人を守ること
4.経済の管理力をより強いものにすること

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「あなたの大切なものは何ですか?」

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「道路です。
食料などを運ぶ車が通る道路は、大切なものなんです。」
この絵を描いたのは、Choueb、11歳の男の子です。

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ジブチの経済を支えているのが、
主要産業であるジブチ港の施設サービスとジブチ鉄道です。
アフリカ大陸の産物を世界中に運ぶジブチ港は、
ジブチで大切な役割を担っています。
日本人にもおなじみのエチオピア産モカコーヒーは、
この港を経て私たちの食卓に届きます。

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・・・

「あなたの大切なものは何ですか?」

「木です。ジブチには木があまりないので、大事なんです。
木は水をためることもできます。」
この絵を描いたのは、Ali、12歳の男の子です。

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「畑です。食べるための大切な野菜や果物を育てる場所だからです。」
この絵を描いたのは、Farah、14歳の男の子です。

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ジブチを含む「アフリカの角」地域では、
1950年代以来最高レベルの干ばつが起こっています。

ジブチでは、内陸部の農業作物が実りにくい地域で生活している人々が
以前から貧困や食糧不足に陥っていました。
今回の大干ばつは、これまでの食糧不足にさらなる打撃を与え、
深刻な食糧危機を招きました。

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多くの民族や宗教が密集している「アフリカの角」地域では、
紛争が多く発生しています。
ジブチの隣にあるソマリアでは、
1991年に大きな内戦がおこり、それが今も続いています。

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紛争の危険から逃れてきたソマリアの難民を、
ジブチは自分たちの国へ受け入れ、助けてあげたのですが、
これにより、ジブチの経済は苦しくなってしまいました。

このように、問題はジブチ一ヵ国で解決するものではありません。
周りの国における政治的状況も大きく影響するのです。

WFP(国連世界食糧計画)は、緊急食糧支援をはじめました。
穀物や豆、塩、砂糖、植物油、栄養価の高いビスケットなどを
ジブチの人々10万人以上へ届けました。

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WFPは、このプロジェクトの実施を通して、
ジブチの食糧危機において、少しでも助けになるようにと、
日々活動しています。



・・・

「あなたの大切なものは何ですか?」

「清潔できれいな家や建物です。」

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ジブチでは、都市部でも下水処理の仕組みが不足しており、
不衛生な状況にあります。

一般に、ジブチの国立病院は、
高い診療費や医薬品代が必要なため、
貧しい人々は十分な治療を受けることができません。

このような中、ジブチ市内にあるポール・フォール病院は、
診療と医薬品を無料で提供しているため、
収入が低い人も安心して受診することができます。
さらに、この病院はWFPによる食糧支援を受けており、
ジブチ国内のNGOと協力して、
1日3食の食事を入院患者に配っています。

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ところが、院内の衛生環境がよくなかったため、
治療中の患者が病院から外へ逃げ出してしまう
ということが何度も起こりました。

患者が院外へ出ると、
その患者がわずらっている病気も
他の人々へ感染する恐れが出てしまいます。

この病院の敷地には、病院用の下水タンク(糞尿を貯めるためのもの)
があったのですが、このタンクから耐えがたい汚臭がしていました。
また、下水パイプは糞尿がつまって使える状態ではなかったため、
それを修理する必要がありました。

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NPO AMDAは病院の下水工事改修プロジェクトを実施しました。

AMDAは、具体的に以下の活動を行いました。
1.下水タンクを取り除き、下水管を整備すること、
2.トイレを修復し、別に新しいものをつくること、
3.病院内へ安全な水を供給すること

これにより、
病院の衛生状況はよくなりはじめました。

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「人々がこの病院で、少しでも心地よい毎日を過ごし、
病院の不衛生さから患者が逃げて病気が広まらないように。
ととのった医療環境の中で病気の治療に集中し、
健康な体と笑顔を取り戻すことができるように。」
と、活動を続けていく、とAMDAは言っています。



・・・

「あなたの大切なものは何ですか?」

「私は、学校の絵を描きました。
学校で勉強できるということが、大事だと思います。」

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ジブチでは、就学率の低いことが問題となっています。
国連人口基金(UNFPA)が発行している
「世界人口白書2011」によると、
1991年から2009年までの初等教育就学率は
50%以下と非常に低く、
世界最低10位の中に入ってしまいました。

ジブチにおける就学率が低い原因の1つは、
学校そのものが不足していることです。

現在ある学校は、すでに満員状態で、
一つの教室に70名近くの生徒が勉強していました。
日中の気温が50度を超えるなか、
隣の生徒と隙間もない状態で勉強することは、
子どもたちにとって過酷な状況です。

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さらに、ジブチ政府が教育制度を改善し、
基礎教育9年間を誰でも無料で受けられるようにしたので、
これからも生徒の数が増える見込みです。

農業に適した土地が少なく、天然資源をもたないジブチが、
国を豊かにするためには、
教育に力を入れ、優秀な人材を育てることが必要です。
しかし、経済状況が厳しいジブチは、
学校や教室を増やしたくても増やすことができず、苦しんでいます。


ジブチ政府から協力を求められた日本政府の要請を受けて、
大日本土木株式会社は、
小学校と中学校あわせて5つの学校を建設しました。

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プロジェクトが新しくつくった教室は100教室以上になりました。
これにより、何千人もの子どもたちにとって、
新たに勉強できる場が生まれました。

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今まで学校に行かれなかった子どもたちが
学校へ通えるようになり、
生徒一人ひとりにおいて勉強できるチャンスが増えました。
ジブチの未来を担う「人」を育てることができるよう、
人々は歩みはじめています。



・・・

「あなたの大切なものは何ですか?」

「家に電気が通っていることです。」

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高い気温と乾燥した気候のジブチは、
水資源や地下資源などの天然資源をもっていないため、
国内で使うエネルギーのほとんどを
海外から輸入した燃料によってつくっています。
現在の発電方法では外国に頼るしかないため、
自分たちの力でエネルギーをつくりだすことが必要です。

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国際協力機構(JICA)はジブチにおいてエネルギー開発計画を行いました。
このプロジェクトでは、
1.ジブチの政府機関である研究センターに太陽光パネルを設け、
2.太陽光発電による電力をつくりだすとともに、
3.持続可能な管理ができるように、現地の人へ技術を伝えました。

太陽光発電システムは、温室効果ガス
(そのガスによって周囲の気温が上がる気体)を減らし、
環境を破壊しにくいという利点ももっています。

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この活動を通して、ジブチの人々が自分たちの力で、
エネルギーを開発できる土台づくりができました。
今回の研究センターのように太陽光発電をもつ施設が増えて、
エネルギー開発がジブチ全土に広がるよう、
国際協力機構は願っています。



・・・

「あなたの大切なものは何ですか?」

「故郷で暮らす家族と、父が飼うラクダです。
普段は会えないけれど、僕にとってかけがえのないものです。」

(ここに挿入する絵と写真を現在、検討中です。)
(参考 DBT_001a.jpg h3a.jpg)







一人ひとりは違うけれど、
あなたにもわたしにも、
心から大切にしているものがある。

お絵描きイベントで絵を描いてくれた人たちに、
私たち読む人が会うチャンスは、ほとんどありません。

でも、絵を描いてくれた人それぞれが、
大好きなもの、
宝物にしているもの、
支えとしているもの、

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それらを「大切にする想い」を読む人が感じ取った時、
今まで遠く離れていた存在が少し近くに思えるかもしれません。
そんな、「お絵描きイベント」の願いを、
これからも実感できたらいいなと筆者は思います。





・・・
・・・


絵と写真を集めた人:
原田匡剛

画像データを編集し、文章を書いた人:
渡部香織

編集完了日:
2012年1月17日

監修・校正:
山本敏晴

企画・製作:
NPO法人・宇宙船地球号
http://www.ets-org.jp/

人物が写っていない画像は、
以下のフリー素材会社から提供を受けたものもあります。
(株)データクラフト「素材辞典」
http://www.sozaijiten.com/

posted by お絵描きイベント at 10:09| 日記