2011年12月06日

フィリピン Philippines

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フィリピンは東南アジアにある、大小合わせて7107もの島々から構成される
多島国です。
セブ島は日本人にもおなじみのビーチリゾート地で、
島内は観光客向けに美しく整備されています。
そして言わずと知れたバナナの産地ですね。
多くの日本人はフィリピン産のバナナを一度は口にしたことがあるでしょう。

人口は約9,401万人(2010年推定値、フィリピン国勢調査)
その内、首都のマニラにはその周辺をあわせ約1,155万人が住んでいます。
近隣の東南アジア各国と比較すると、人口密度や人口増加率が高くなっています。

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民族はマレー系が主体で、ほかに中国系、スペイン系及び
これらとの混血並びに少数民族がいます。

国語はフィリピノ語(タガログ語を基礎として近年作られた新しい言語)。
公用語はフィリピノ語及び英語で、その他80前後の言語があります。

・・・

あなたの大切なものはなんですか?

「私の両親の愛と私を思う気持ちです」

(ここに挿入する絵と写真を現在、検討中です。)
(参考 Phillippines_Draw014_SH_Alphonso_a.jpg C8ET0879_a.jpg)



フィリピンは世界最大の海外出稼ぎ大国の一つです。

海外で生活しているフィリピン人は2009年時点で、
約858万人とおそよ国民の10人に1人となる計算です。

海外からの送金は年々増えていて、
その額は対GDP比約12%、198億ドル(※)にもなっています。
(※出所:Commission on filipinos overseas 2009年 世界銀行)
これはあくまで銀行を経由した調査可能なお金のみを計算したもので、
実際は300億ドルを有に超えているとも言われています。
フィリピンの2011年の国家予算が約373億ドルということを考えても、
フィリピンにとって莫大な金額だということがわかります。

あなたの大切なものはなんですか?
「私を育む家族と地域です。
 亡くなった父親は私をいつも近くで見守ってくれています。」
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上の家族の絵を描いてくれたのは、
見たとおり、子どもではありません。
日本で出稼ぎをする前に日本語などの研修をする機関
(フィルテック開発財団)の生徒です。
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研修生の多くは20歳前後です。
今回訪ねた際に研修を受けていたのは
日本の会社が所有する船の船員として働く予定の方々です。
普段彼らは海の上で働いているため、私達が彼らと接することはありませんが、
客船を除く日本の会社が所有する船では非常に多くのフィリピン人が働いています。

フィリピン人は明るく、よく働き、そして英語力が高い、
というのがその理由だといわれています。
日本だけでなく世界の船はフィリピン人の労働に支えられている
と言っても過言ではありません。
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出稼ぎ先やその職業も最近は変化しています。
かつては欧米や日本などの先進国で女性が
メイドやダンサー、ホステスとして働く人が多かったのですが、
最近は経済発展が著しい中東(サウジアラビアなど)、
日本以外のアジア諸国(マレーシア、シンガポールなど)で
男性が各種建設工事従事や、先に述べた船員として働く人が
多くなっています。

日本とフィリピン政府の間での取り決め(※)によって、
最近はフィリピンから看護師や介護師を受け入れる方向で
調査から人材育成まで行われています。
(※経済連携協定(EPA)、2006年締結)

あなたの大切なものはなんですか?
「家族、そして私達が築く未来への道です。
 これまで家族が支えてきてくれたから今の私があります。」
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家族のよりよい未来のために
家族と離れ海外で出稼ぎをすることを選択するのです。

・・・

「ジャピーノ」という言葉をご存知でしょうか?

フィリピン人と日本人の間に生まれた子どもを指します。

正式に結婚している場合もありますが、そうでない場合も多く
父親の所在が不明・・・というこどもたちに対して
「ジャピーノ問題」とすることが多いようです。

先に述べた出稼ぎで日本に行き、そこで子どもを授かった場合や
フィリピンの性産業従事者が、日本から来た旅行者を相手にした結果
子どもを授かった場合などが父親不明の主な原因となっています。

問題というのは、
純粋に父親がいない、ということだけではなく、
ジャピーノの母親の多くは性産業従事者であるため
収入が低く不安定であり子どもの十分な養育費が払えない、
ということもあります。

日本で出産し父親が不明である場合は
国籍のない子どもとなってしまう場合もあります。
国籍がないとパスポートも取れず、選挙権もなし、
その他多くの国民としての権利が与えられません。

ジャピーノとその母親を支援するNGOは
日本、フィリピン両国に存在しています。

そのNGOの一つであるDAWNの
フィリピン事務所で大切なものを描いてもらいました。

あなたの大切なものは何ですか?
「DAWNと私の家族です」
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DAWNでは
相談、法的援助、健康管理、
そして教育と財政に関わる支援などをしています。

このような活動に反し、問題を抱えたジャピーノは今も増え続けています。

・・・

あなたの大切なものはなんですか
「私の未来の糧となる教育です。」
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フィリピンは識字率93.4%(2003年調査)となっており、
最貧困層でも小学校卒業レベルの知識を有しているといわれています。
実際は識字教育のみで、簡単な算数ができずに就労の機会を奪われている人が
多くいます。

都市部とそうでない地域の教育における問題は別のものです。

都市部では、公立の多くがマンモス校で、教育機会はあるのですが、
1日に2部、3部制をとっている学校が多く、
たくさんのの生徒を抱える先生は子ども達の状況を把握していないため
容易に落ちこぼれが出る環境にもあります。

中等教育へ進める人は決して多くなく、
高等教育(大学など)進学率となると
職業訓練専門学校レベルのものを含んでも約30%となっています。

都市部以外では、
教育施設、教材自体の不足が問題になっています。

両方に言えるのが教師の不足、質の問題です。
教師になる人々は条件の良い私立校へ就職してしまうためです。

教育格差を埋めるための努力は民間でも積極的に行われています。
その一つであるケソン市のシスターの家でも大切なものを描いてもらいました。

あなたのたいせつなものはなんですか?
「スクールバスです。私を学校に連れて行ってくれるから。」

(ここに挿入する絵と写真を現在、検討中です。)
(参考 phl_2010_k_05_A_a.jpg P1040041_a.jpg)


彼らは毎週土曜日にシスター達の基礎教育を受けに来る子どもたちです。
ここには両親は健在だけれども、貧困により毎日学校に行けない
5歳〜7歳くらいの子どもたちが通っています。

・・・

あなたのたいせつなものはなんですか?
「私の宗教、カトリックです」
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フィリピンでは国民の83%がカトリックです。
残りは、その他のキリスト教が10%、イスラム教が5%となっています。

しかし、フィリピンにカトリックが伝わったのは実はイスラム教より後です。
フィリピン南方にイスラム教が伝わったのが1380年ごろ、
カトリックは大航海時代のスペイン人探検家、マゼランの到着(1521年)後です。
カトリックはスペインの統治により広く強く伝わり今に至ります。

ミンダナオ紛争

フィリピンのミンダナオ島という島の南部では、今でもイスラム教の比率が多く
宗教による文化の違いなどが原因で独立運動を起こしています。
独立運動はフィリピン国軍との内戦状態となり、長期化かつ過激化しています。
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ミンダナオ紛争解決のためにアメリカ、マレーシア、日本などが積極的に
支援を行っています。
つい最近(2011年8月)も日本で独立運動のリーダーと
フィリピンのアキノ大統領による初のトップ会談が行われました。

日本からは他にも道路、学校、給水施設のインフラ整備や、
現地行政組織の人材育成を行い、テロの温床となる貧困を削減することで
平和的解決へ導くことを目的とした支援をしています。

平和への道のりには紛争を止めることだけではなく、
さまざまな問題の解決が必要とされています。

・・・

あなたのたいせつなものはなんですか?
「環境を守ることです」
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フィリピンは多島国であることから
温暖化の影響を受けやすい、と言われています。
温暖化により南極の氷が溶け、海面が上昇することによって
海岸沿いの人々の暮らしが脅かされるからです。

フィリピンでは温暖化を阻止するために自然を守ると同時に、
来るであろう変化に適応していくための取組みが行われています。

2010年、世界銀行はフィリピンの気候変動適応に関する
プロジェクトに約500万ドルの支援を決定しました。

これはフィリピンに多い農業、漁業、自然資源の管理などにおいて
費用対効果の高い戦略を練り、実証することで
気候変動適応のための枠組みを作ることを目的とした支援です。


フィリピンでの「環境破壊」は、自然を失う可能性の他、
ゴミの問題も大きなものとなっています。

一躍有名になったフィリピンの負の代名詞
「スモーキーマウンテン」がその象徴です。
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このゴミの山は首都マニラの郊外にいくつかあります。
一日約6000トンものゴミが捨てられる場所です。
膨大な量のゴミが積みあがり、
腐ったゴミから発生するメタンガスなどが原因で自然発火し
常にどこかで煙があがっていることから
「スモーキーマウンテン」と呼ばれています。

ここでは瓶や缶などお金になるようなゴミを拾って
生計を立てている「スカベンジャー」と言われる人がたくさんいます。
老若男女関わらず朝から日暮れまでゴミ山の中で作業しています。

ものすごい臭いが立ち込める中、
子どもたちの多くははだしでゴミ山に上ります。
多くの病原体、ゴミに埋もれる、ゴミ処理者に巻き込まれるなどの危険を冒して
一日に稼げるのは平均で200円程。
時には捨てられた注射針、割れたガラスの破片などが刺さって
感染症にかかり命を落とす人もいます。

現在はスカベンジャーも場所によっては登録制になったり、
ゴミに出される前に業者が換金できるものを買い取ったりなどして
だれもがゴミを拾って生計を立てられるわけではないようです。
しかし、ゴミ山の周辺に住む人々は減りません。
生活の場として人々はそこにいて、巨大スラム化しているのです。
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現在各国のNGOや企業が支援に乗り出しています。
中でもイタリアのPangea Green Energy社は、
ゴミ山から発生しているメタンガスを電力に代え、
周囲のスラム街で活用するという画期的な事業を行っています。


ゴミ山で暮らす子どもたちの大切なものは何でしょうか。

あなたの大切なものは何ですか?
「家族と私達の家です」
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「家族が大好きです。果物が大好きです。」
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とあるゴミ山に住む子どもから、私は質問されました。
「あなたの家にはマンゴーの木がある?」
私は答えました。
「ないよ。」
「パパイヤの木は?」
「ないよ。」
「何にもないんだね。
 私の家にはぜーんぶあるよ!」
ゴミ山に住む子は、自慢げに話してくれました。

彼らには私達より、今幸せかどうか
自分で感じる力があるのかも知れません。
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・・・

あなたのたいせつなものはなんですか?
「島そして海です」
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美しい島々、海。
日本ではリゾート地としてはセブ島がもっとも有名で、
2010年の1月〜3月にセブ島を訪れた日本人は
約42000人にもなります。
(2010 フィリピン観光省調査)

美しい島々はリゾートにはもってこいですが、
問題もすくなくありません。

フィリピンでは地方のインフラの開発が遅れています。
観光地でない島では、道路、港、空港に加え、
電気、水道などの施設が未発達であることが多く
不便を強いられています。

また、台風や高潮など自然災害の影響も大きくなります。

これらの問題に対して、JICAは多くの
技術協力プロジェクト、有償資金協力事業(お金を貸すこと)
を行ってきました。

また日本単独の支援だけでなく、NGO、企業、政府が協力し、
2012年10月自然災害が起きた際に相互に緊急支援をするため、
フィリピン、日本、インドネシア、韓国、スリランカ、台湾の6カ国・地域が参加する
国際的連携機関となる「アジア太平洋災害支援プラットフォーム」(仮称)が
発足の予定となっています。


・・・

フィリピンの旗

フィリピンの旗の白は平等と友愛を、青は平和・真実と正義を、
赤は勇気と愛国心を象徴し、黄色い太陽は自由を意味しています。
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3つの星は主な島であるルソン島・ミンダナオ島・ヴィサヤ諸島を象徴しています。
太陽から伸びる8本の光条は、フィリピン独立革命の際
最初に武器を取ったルソン島所在の8州
(パンパンガ州、ブラカン州、リサール州、カビテ州、
バタンガス州、ラグナ州、タルラック州、ケソン州)を表しています。

2009年9月27日、国会は、スペインの占領中も屈服しなかった
ムスリムに敬意を表し、
光条を1本増やして9本とする議案を可決しています。
しかし現在はまだ変更されていません。


あなたの大切なものはなんですか?
「私の国、フィリピンです」
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これまで述べた中で、NGOが何度か登場しましたが、
フィリピンのNGOは能力が高く、
特に社会開発分野におけるサービス提供の一担い手としての地位は、
憲法及び地方自治において、相当程度確立していると考えられます。

約50万もの市民社会グループがあり、このうち5万の組織が
非政府組織(NGO)として登録されています。
フィリピンの市民社会には、
1)社会福祉事業など政治的活動がNGOの役割となっている
2)NGOが実施する福利活動は宗教団体や政府が実施するものと性格が異なる
 (有料サービスである)
3)NGOは政府から採算面を含めて保護されている
という特徴があります。

あなたの大切なものはなんですか?
「たった一つの地球、世界の平和です。」
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フィリピンの人々は自分の国を愛し、
自分達の生きる社会・世界を自分の手でより良いものに、
と考え行動する人々が多いのです。

私達が見習うべきは、その明るい笑顔だけでなく
その奥の美しく強い心意気ではないでしょうか。





・・・
・・・


絵と写真を集めた人:
二ッ谷カーラ(2010年)
山本敏晴(2004年)

画像データを編集し、文章を書いた人:
佐渡愛子

編集完了日:
2011年12月12日

監修・校正:
山本敏晴

企画・製作:
NPO法人・宇宙船地球号
http://www.ets-org.jp/

上記に掲載された写真のうち、
人物が写っていない写真の一部は、
以下のサイトから提供されたものもあります。
トリップアドバイザー
http://www.tripadvisor.jp/

posted by お絵描きイベント at 12:15| 日記

エジプト Egypt

エジプト・アラブ共和国は、
アフリカ大陸の北東にある国です。

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リビア、スーダン、イスラエルと国境を接しています。
世界で一番長いナイル川がエジプトには流れています。

国の大きさは日本の3倍に近いくらいで、
人口は約8000万人、 日本の半分より多いくらいです。

首都はカイロにあります。
世界にいるアラブ人の4人に1人はエジプト人であるくらい、
アラブ人が多い国です。

人々はアラビア語を話します。
ほとんどの人がイスラム教を信じていますが、
キリスト教徒がいる地域もあります。

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農業、製造業、石油・天然ガス、小売・卸売などが主な産業です。

また、周りの国々における平和への取り組みや、
アフリカ大陸諸国の安定のために大きな役割を果たしており、
アラブにおけるリーダーのような存在です。

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そんなエジプトが今、
大きな転機を迎えています。



・・・

エジプトでは、
紀元前30世紀頃に、統一王朝ができあがりました。

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紀元前6世紀にペルシア、
紀元前4世紀にギリシア、
紀元前1世紀にローマがこの地を支配しました。

1世紀には、初期のキリスト教であるコプト教が教えを広め、
7世紀になって、イスラム教が布教をはじめました。

16世紀からオスマントルコ帝国が統治を行い、
19世紀にはイギリスがこの地を保護下に置きました。

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第一次世界大戦でイギリスとオスマントルコ帝国が
戦争をはじめたため、
1922年、エジプト王国は独立をはたしました。
1952年には、軍隊の指揮官たちがエジプト革命が起こし、
王様が国を治める王制から、
軍隊の最高指導者が国を治める体制へと移行しました。


・・・

「あなたの大切なものは何ですか?」

「僕が生まれ育ったエジプトです。」

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エジプトでは、
2011年2月に国民が反政府運動により革命を起こし、
30年間続いた政権を崩壊させました。

この政権崩壊は、2010年12月にチュニジアでおきた
革命をきっかけとして起こりました。
政府に反対する運動を行なった国民がもっていた、
不満の原因は以下です。

1.食糧価格が高騰したこと
2.失業率が高いこと
3.政権を担う側が独裁や利権の独り占めをしてきたこと
4.それに対する民衆の不安を国が抑えきれなくなったこと

この結果、
国民の不満が爆発して、エジプト政府は崩壊しました。

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その後も、反政府組織が、
北アフリカから中東にかけての「アラブ世界」をはじめ、
それ以外の各国でも反対運動を起こしました。
この革命の嵐を人々は『アラブの春』(または、中東の春)と呼びました。

この歴史的問題をうけ、
国際社会における平和と安全の責任をもつ、
国連安全保障理事会は会議を開きました。

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この会議で、
人権問題や民主化に対する支援をするかどうかについては、
各国が異なる意見を出しましたが、

1.エジプトがうまく次の政権へ引き継ぐことができるように、
2.選挙の手伝いや、憲法を改める際のアドバイスをして、
3.長期間にわたる開発の手助けをする。
これらのことをあまり干渉しすぎないように、
配慮しながら行う必要があるという点で、意見が一致しました。

「ベルリンの壁崩壊を思い起こさせる、歴史的瞬間だ。」
「今回の事態は、独裁政権でもイスラム原理主義国家
(イスラムの決まりを社会において厳密にあてはめようとする国)
でもない、民主主義国家という第3の選択が可能なのではないか。」
というように、エジプトの政変を重要な出来事としてとらえる意見を
各国が出しました。

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私たちが生きている今この時も、歴史的な瞬間がうまれている、
と筆者は感じます。



・・・

「あなたの大切なものは何ですか?」

「家に、食べ物やプレゼント、いろんなものがいっぱいあることです。」

(ここに挿入する絵と写真を現在、検討中です。)
(参考 CH5_001a.jpg)



エジプトは、「NEXT11」といって、
将来大きく経済成長するだろうと人々が期待する国のなかに入っています。

とはいうものの、この国は解決するべき経済問題を多くもっていて、
1.広がる貧富の差、2.高い食糧価格、3.高い失業率など、
国民は日々の生活において苦しい思いをしています。

エジプト政権が崩壊した原因には、
これら経済面での問題がたくさん影響しました。
史上に残る政治的危機は、
追い打ちをかけるようにエジプト経済に大打撃を与え、
国の損失額は、国内総生産(GDP)の9割にも及びました。
エジプトの外務大臣は、経済的な支援を各国にお願いしました。

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これを受け、日本の外務省はエジプトに対して、
5億円の無償資金協力をすることを決めました。

エジプトは政権が崩壊した後、
平等な社会と経済的に成長するよう、努力を重ねています。
この協力は、エジプトが自分たちの力で不平等をなくし、
雇用を創り出すなど、国を立て直すことを助けるものです。

たくさんの国がエジプトを支援しています。
もう一度勢いを取り戻す日がエジプトに早く来るよう、強く願います。



・・・

「あなたの大切なものは何ですか?」

「みんなと一緒に行く学校です。」

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エジプト政府は、20世紀のエジプト革命が起きた時、
公的機関が行う教育の授業料を、
小学校から大学にいたるまですべて無料にしてあげました。
これにより、誰もが平等に学校に通えるようになりました。

ところが、
エジプトでは、近年人口が増え続けており、
20歳未満が人口の半数に及びます。
さらに政府が教育を無料にすると、学生の数は急激に増えました。
すると、1人の先生が受け持つ学生が多くなり、
先生が学生全員に指導を行き渡らせることができず、
結果的に教育の質が低くなってしまいました。

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優秀な学生は、質の高い教育を受けようと海外へ留学し、
エジプトに戻らず海外で就職することが多くなりました。
高い水準の知識や技術をもった人々は次々に国外に出て行ってしまうのです。
エジプトの教育はこのような悪循環に陥っています。

これをうけて2010年、エジプトと日本が共同で
世界トップレベルを目指す大学
「エジプト日本科学技術大学」をつくりました。

このプロジェクトは、
エジプト政府が日本の文部科学省や外務省、
京都大学、早稲田大学など12大学と協力して実施しました。

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1.少人数制の授業、2.大学院と研究を中心とした教育
3.実践的で国際レベルの教育提供
など、エジプト国内で今までなかった特色があります。

エジプト政府は、この大学を開校することにより、
エジプト国内や中東・アフリカの国々における
経済的・社会的発展を導く優秀な人材を
長期にわたって生み出すことを目指しています。

教育の分野でも、未来を担う人々が育っていきます。



・・・

「あなたの大切なものは何ですか?」

「きれいな水を飲んだり、そこで魚釣りをしたりすることです。」

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エジプトでは、国としての保健サービスはよくなりつつあります。
健康診断、予防接種、感染症や飲料水への対策など
国は多くの制度を整えました。

ところが、都市と地方の格差が広がっており、
地方の貧しい人々にはこれらのサービスが行き届いていません。
彼らは、発育不良、貧血、寄生虫による病気など、
まだまだ多くの問題を抱えています。

これまでの支援は、
乳児や幼児、出産前後の女性を対象にすることが多く、
学校に通うくらいの子どもに向けては、あまり活動をしてきませんでした。

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NPO HANDSは小・中学校に通う子どもたちの健康を改善するための
支援をはじめました。

HANDSは、主に以下の活動を行いました。
1.学校保健を行う医師や看護師への研修
2.指導要項の作成
3.健康教育に関する教材の開発
4.計画に対する評価制度の体制づくり

このプロジェクトは、小・中学校において充実した保健活動を進めること、
そこに通う子どもの健康状態がよくなることを最終的な目標としています。

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2008年に始まったこのプロジェクトは、
2012年まで行われる予定です。
ここまでの成果をうけて、
現地の人が活動を全国に伝えたいと普及する動きを広めはじめました。

エジプトの健やかな子どもたちが、今日も元気を取り戻しています。



・・・

「あなたの大切なものは何ですか?」

「大きな木が大切です。
下の地面にもいっぱい草が生えていたらいいなと思います。」

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エジプトは国土のほとんどが砂漠であり、
緑地はほんの少ししかありません。

ところが、
今は砂漠である場所の中に、
数千年前はナイル川が枝分かれして流れており、
自然が豊富だった地域があることを、近年の調査が発見しました。

この報告を受けたエジプトは、
可能な場所にもう一度水をひき、
その区域を農地として開拓しようと決めました。

そして、そこで300万人もの人々が生活できる新しい街をつくろう
という壮大な計画を立てました。

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株式会社日立製作所は、
エジプトの緑地を増やすための国家開発計画である、
ポンプ・ステーション建設プロジェクトに協力しました。

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実施したのは、
1.人工的な湖であるナセル湖の岸に、
2.日立製作所の製品である、大型の渦巻きポンプ約20台を取り付けて、
3.東京ドーム20杯分以上におよぶナイル川の水を毎日注ぎ込み、
4.砂漠地帯に水を入れよう。
というものでした。

このプロジェクトが緑地化した面積は、
東京都を越える広さになりました。

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ポンプ・ステーションの完成後、
人々は、トマトや玉ねぎ、ピーマン、メロンなど農作物を育てはじめ、
新しい街づくりを着々と進めています。

古代エジプトの水を呼び戻すため、
そこに新しい暮らしを生むため、
エジプトの人々は、夢の計画を叶えるでしょう。



・・・

「あなたの大切なものは何ですか?」

「エジプトがエジプトであること、が大切です」

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この絵が描いてある、紙のようなものは『パピルス』といいます。
パピルスは、古代エジプトにおいて人々が使ったものでした。
紙の原型としては世界最古のもので、
エジプトで受け継がれた大切な文明の一つです。

薄く切った植物の茎を、縦と横に並べ、
その上に重い石をのせ乾かしてつくります。

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昔、エジプトは、多くの神を大事にする多神教の国でした。
1000以上の神々を人々は尊んでいました。
何千年も前に人々がつくった、
世界最古のピラミッドが、エジプトにはあります。
エジプト文明は、四大文明の中でも一番古い歴史をもっています。

ところが、現在のエジプトで、
人々が信じるのはイスラム教とキリスト教です。
古代エジプト時代の多神教を信じる人はいません。

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かつて、他の国や異なる宗教をもつ民族がエジプトを攻め、
混血化をすすめたために、古代エジプト人という純粋な民族は消滅しました。
しかし、古代エジプト人の遺伝子を受け継いだ人々が
明日も生きようとする気持ちは変わりません。

古くて大切なもの、新しくて希望あるもの、
それぞれが、パピルスの繊維のように組み合わさって
一つの強い力をつくりだす、
そんな風にエジプトが在りつづけますようにと、
筆者は心から願います。





・・・
・・・


絵と写真を集めた人:
寿 美和(トシナガ ミワ)
山本敏晴

画像データを編集し、文章を書いた人:
渡部香織

編集完了日:
2011年12月13日

監修・校正:
山本敏晴

企画・製作:
NPO法人・宇宙船地球号
http://www.ets-org.jp/

posted by お絵描きイベント at 10:22| 日記