2011年10月08日

インド INDIA

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インドは、面積・人口・経済規模とも南アジアで最大の規模を誇ります。
世界7位の広大な国土のなかに12億もの人口を擁します。
インドでは人口爆発に歯止めがかからず、2040年頃にはインドの人口は中国の人口を追い抜くとみられています。

近年、広大な国土・豊富な人材・豊富な天然資源を背景に順調な経済成長を遂げ、新興国と呼ばれ、同様に順調な経済成長を遂げているブラジル、ロシア、中国、南アフリカ共和国とともに『BRICS』の一角を占めます。

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また、先進国首脳会議は、アメリカ、イギリス、イタリア、カナダ、ドイツ、日本、フランス、ロシアというG8から、アルゼンチン、インド、インドネシア、欧州連合、オーストラリア、韓国、サウジアラビア、中国、トルコ、南アフリカ共和国、ブラジル 、メキシコを含む『G20』へと移行しようとしています。

このように、新興国として世界に影響を与える立場にある一方で、12億の人口のうち、1日1ドル以下で生活する人が3割を占めるなど、依然として深刻な課題を抱えています。

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インドは、歴史的に日本と強い結びつきをもちます。
第二次世界大戦後に戦勝国が日本の指導者たちを裁いた東京裁判では、11人いる判事のうちインドのパール判事だけが被告人全員の無罪を主張しました。
また、1950年以降、日本に鉄鉱石を輸出してくれる国はほとんどありませんでしたが、インドは大量の鉄鉱石を日本に輸出し、日本の経済成長を支えました。
さらに、経済面や安全保障の面でも協力について合意しています。
そして、いま、日本からみてODAの最大援助国がインドです。
インドとの協力関係はこれからも強くなるでしょう。

民族構成は、北部を中心に広く分布するインド・アーリア人と、南部に分布するドラヴィダ人とに大きく分けられます。

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「僕の大切なものはヒンドゥー教の神様の一人の、
 ガネーシャ(商業・学問の神)です」

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インドの公用語はヒンディー語、準公用語は英語です。
しかしながら、州によって異なる言語が使用されているため、紙幣には17の言語が印刷されています。

宗教は、ヒンドゥー教徒が約80%、イスラム教徒が約13%を占め、残りをキリスト教徒やシーク教徒、仏教徒、ジャイナ教徒などが占めます。

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「僕の大切なものはお祭りです」

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紀元前2300〜紀元前1800年まで、インダス川流域でドラヴィダ人によるインダス文明が栄えていました。
しかしながら、紀元前1500年頃になると、中央アジアからアーリア人が侵攻しはじめました。
この際、アーリア人が今も根強く残る『カースト制度』を持ち込みました。

カースト制度による身分制度は、『ヴァルナ』と『ジャーティ』という二つの枠組みからなります。
ヴァルナには、バラモン(司祭)、クシャトリア(王族・戦士)、バイシャ(商人)、シュードラ(農民・労働者)という4つの身分があり、さらにカーストにすら入らないダリット(不可触民)という身分もあります。
ジャーティは、『職業』によって細かく分けられ、1901年の国勢調査によれば、2378もありました。

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ヴァルナは肌の色を意味し、バラモンには白、クシャトリアには赤、バイシャには黄、シュードラには黒が割り当てられています。
じつは、カースト制度は、色白のアーリア人が色黒のドラヴィダ人を支配するために導入したものだったのです。
そして、ドラヴィダ人との間で混血がすすまぬよう、異なる身分の者との結婚は禁止されました。

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現在、カースト制度は、インド憲法により禁止されています。
また、国連人種差別撤廃委員会は『世系に基づく差別』を策定し、インドのカースト制度は国際人権法の人種差別であると明記しています。

いま、ITエンジニアに代表される新しい職業ができたため、特に都市部ではカースト制度による身分制度は崩壊しつつあります。

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しかし、それでもカースト制度は農村部を中心として根強く残っています。
その理由としては、人の生まれついた身分は前世での行いの結果であり、いまの身分を全うすることによって来世はよりよい身分に生まれると考えられているため、低い身分に生まれついた人がその境遇を受け容れる風潮があることがあげられます。

紀元前5世紀頃になるとブッダが説いた仏教が広まりました。
ブッダは、「生まれによってバラモンとなるのではない。生まれによってバラモンならざる者となるのでもない。行為によってバラモンなのである。行為によってバラモンならざる者なのである」と説き、カースト制度を真っ向から否定しました。

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4世紀頃にバラモン教が土着の神々を吸収してヒンドゥー教として広まると、カースト制度を否定する仏教は弾圧され、ほぼ消滅してしまいました。
ですが、近年は、差別に苦しむダリット(不可触民)が一斉に仏教に改宗するなど、再生する動きもみられます。

11世紀頃になると北方からイスラム勢力が進出し、イスラム教が広まりました。
イスラム教徒が北方に多いのは、イスラム勢力が北方から進出してきたためです。

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16世紀にはムガル帝国がインドのほぼ全土を掌握するとヒンドゥー教徒を弾圧し、これに対抗する反イスラム運動がおこりました。
これが、ヒンドゥー教とイスラム教との対立のはじまりでした。
ヒンドゥー教とイスラム教との対立は根強く、今でもインド各地でテロ事件が起きています。

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(牛は、ヒンドゥー教では、聖なる動物とされています。)

17世紀になるとムガル帝国は衰退し、同じ頃にイギリスが東インド会社を設立しました。
そして、イギリスは高カーストの現地人を傭兵として雇って植民地戦争を勝ち抜き、インドを植民地として支配をするようになりました。
このため、インドにもキリスト教が広まりました。

「あたしの大切なものは神さまです」

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イギリスは、18世紀から、産業革命を経て機械製綿製品を大量生産できるようになりました。
すると、イギリスはインドでつくらせた綿を安価で仕入れ、その綿をつかって機械製の綿製品を生産して、その綿製品をインドで売るようになりました。
この結果、インドの綿工業は破壊されてしまいました。
機械製の綿製品はイギリスによる植民地支配の象徴だったのです。

そこで、マハトマ・ガンディーは、機械製の綿製品の購入を控え、インドの伝統的な手製の綿製品の生産を奨励する非暴力・不服従運動を行ないました。
この運動はインド全土に広がり、インドが独立する足がかりとなりました。

「私の大切なものは独立の父ガンディーです」

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イギリスは第二次大戦により国力が衰えるとインドの独立運動を抑えることができなくなりました。
こうして、1947年にインドは独立しました。


「わたしは宗教の違いを超えてインドがまとまることが大切だと思います」

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ガンディーはヒンドゥー教とイスラム教との間の対立を乗り越えて一つのインドとして独立することを望んでいました。
しかしながら、ヒンドゥー教とイスラム教との対立を抑えることはできず、イスラム教徒が多数を占める東西パキスタン(今のパキスタンとバングラデシュからなります)はインドとは別に独立しました。
そして、1948年、ガンディーが提唱するイスラム教との融和策などの政策に反発するヒンドゥー教の過激派によってガンディーは暗殺されてしまいました。

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(インドの国旗:外務省HPより)

今のインドの国旗は、ガンディーがインドの独立運動の象徴として使用したものを元にしています。
中央の紋章はチャクラ(法輪)で、伝統的な糸車に由来すると言われ、独立に対する決意が込められています。
また、オレンジはヒンドゥー教、緑はイスラム教、白は平和を意味し、宗教の対立を超えて一つのインドとして独立しようという思いが込められています。

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「僕は生命をはぐくむ水が大切だと思います」

(ここに挿入する絵と写真を現在、検討中です。)
(参考 C8ET5166_a.jpg India_d_09_a.jpg)


インドは独立を果たした後も平穏ではありません。
それを象徴するのが、パキスタンと中国との境界にあるカシミール地方の領有権を巡るカシミール紛争です。
カシミールはインダス川上流域に位置し、その水源を譲れないことも紛争を長引かせる原因となっています。

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1947年には第一次印パ戦争が起き、国連インド・パキスタン軍事監視団の調停により休戦となりました。
この戦いにより、カシミール地方の6割をインドが、4割をパキスタンが実効支配することになりました。
1962年には、中印国境紛争が起き、着々と準備を進めていた中国がカシミール地方の一部を奪いとり、また、これに連動して進軍してきたパキスタンとの間で1965年に第二次印パ戦争が起きました。
1971年には、東パキスタン(いまのバングラデシュ)がパキスタンから独立しようとする運動をインドが補助し、第三次印パ戦争が生じました。
これはインド・東パキスタンの勝利に終わり、バングラデシュが建国されました。

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1962年以降、インドと中国の間では戦争は起きていないものの、両国は難しい関係にあります。
インドが南シナ海で東南アジア諸国とともに資源探査をしているのに対し、中国はミャンマー・バングラデシュ・スリランカ・パキスタンとの関係を強化してインドを封じ込める戦略を展開するなど、敵対関係が続いています。


「僕は友情が大切」

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カシミール問題が重大な理由として、核戦争になる恐れがあることがあげられます。
中国は1964年に核実験に成功し、世界で5番目の核保有国となりました。
これに対し、インドは中国に対抗するため核兵器を開発し、1974年にインドは世界で6番目の核保有国となりました。
すると、パキスタンもインドに対抗するために核兵器を開発し、1998年にパキスタンは世界で7番目の核保有国となりました。
こうして、カシミール地方と隣接するインド、パキスタン、中国の三カ国とも核兵器を保有し、それぞれが牽制し合う構図ができました。

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インドとパキスタンは、国連安保理の常任理事国以外の国が核兵器を保有するのを禁ずる『核拡散防止条約(NPT)』は不平等条約であると主張し、加盟していません。
国連安保理の常任理事国である中国が核兵器を保有していることが引き金となって、インド、続いてパキスタンが防衛のために核兵器を開発したことを考えると、これは当然の主張と思われます。

インドとパキスタンとの関係は難しいですが、近年は、両国とも軍縮したり大使を交換するなど対話をしていく姿勢を見せています。

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「わたしの大切なものは読書です」

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インド政府は、教育を重視しており、特に英語、理工系科目の教育に力を入れています。
これが現在の経済成長を支えています。

その一方で、インドの農村部にいる人の多くが読み書きが出来ません。
そこで、インド政府は農村部を中心に多数の学校を建設しました。
この結果、1985年には約43%だった成人識字率が66%に上がりました。

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しかしながら、地域によっては児童労働のために学校に通えない子供も多く、また、女性に教育は必要ないという風に考えられているため女性の識字率が低いなど、多くの課題が残っています。

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そこで、株式会社リコーは、地方にある学校にデジタル印刷機を寄贈し、国際NGOセーブ・ザ・チルドレンや現地NGOと協力しながら教育現場をサポートする活動をしています。

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「僕はコンピュータをマスターしたいです」

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近年のインドの経済成長は、1980年代からの経済自由化政策に端を発します。
特に1990年代からは、国内投資規制の撤廃や変動相場制への移行等の大胆な自由化政策を実施し、今日に至るまで順調な経済成長を続けています。

この経済成長を牽引するのはIT産業です。
インドのIT産業が急成長するのには複数の理由があります。
まず、インドはアメリカからみてちょうど正反対の場所に位置するため、アメリカのIT企業がインドにも拠点を置いて、アメリカとインドで連携しながら24時間体制でシステムを構築するケースが多いことが挙げられます。
また、インドでは英語と理工系の教育に力が入れられていることも追い風となりました。
さらに、ITエンジニアは新しい職業であり、カーストの中のジャーティ(職業による身分の違い)に規定されていないため、誰にでもチャンスがある夢のある分野であり、優秀な人材が多く集まることも一因となりました。

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いま、インドの都市部には、ITエンジニアなど3億人もの中間所得層がいます。
こうした中間所得者層が増加する一方で、所得格差や地域格差が拡大しています。


「私の大切なものは携帯電話です」

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インドの都市部は急速に発展していますが、社会の基盤となるインフラは依然として不足しており、経済成長をするうえでの足かせとなっています。

たとえば、コンテナの6割を受け入れるムンバイから首都デリーまでは約1500キロあり、コンテナの輸送に1週間ほどかかってしまいます。
そこで、インド政府は、日本の太平洋ベルトを参考にして、首都デリーと商業都市ムンバイとの間を高速貨物鉄道で結び、その沿線に様々な企業を集約させる11兆円規模のプロジェクトを進めています。
日本政府はこのプロジェクトに対して資金面・技術面で多大な援助をしており、沿線には日本からも多くの企業が進出するとみられます。


「私の大切なものは電気のある生活です」

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インドでは電力も慢性的に不足しており、工場を24時間稼働するためには効率の悪い自家発電に頼らざるを得ません。
そこで、インド政府はその不足分を賄うため、大量の原子力発電所を建設しようとしています。

諸外国は、1998年にインドで核実験が行われたのを引き金に、インドに対して経済制裁を課しました。
しかし、インドで原子力産業の巨大な需要が見込まれるようになると、アメリカ、フランス、日本、韓国は途端に態度をひるがえし、インドと原子力協定を締結して原子力発電所の建設を受注しています。
これは平和構築よりも経済活動の方が優先されてしまうという現実を端的に示しています。

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インドのシン首相は、日本の福島第1原子力発電所での事故を受けて国内で反原発運動が起きたにもかかわらず、引き続いて原子力発電所を建設していくと明言しています。
その裏側には、原子力産業などの巨大な市場を外交戦略として利用し、受注する国に対して国連安保理の常任理事国入りの支持をとりつけようとする狙いがあります。
この戦略はいまのところ成功しており、アメリカのオバマ大統領は、日本以外の特定の国としては初めてインドの常任理事国入りを支持すると明言しています。
中国との間には国境紛争以来難しい関係にありましたが、両国間の経済的つながりが強くなるにつれて中国も態度を軟化させ、インドの常任理事国入りを支持するようになりました。
日本、インド、ドイツ、ブラジルからなる『G4(国連安保理常任理事国進出を狙う4カ国グループ)』の中では、インドが一歩抜き出ているとみていいでしょう。


「僕はバイクを持つことが夢です」

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インドは大量の二酸化炭素を排出しており、その排出量は世界第5位です。
インド政府は、すべての商用車に対して圧縮天然ガス燃料を使用することを義務づけたり、自然エネルギーの開発を進めるなど、独自の環境政策を実施して対応しているものの、二酸化炭素の排出量を規制する『京都議定書』には批准していません。
また、インド政府は、2012年以降の枠組みを定めるポスト京都議定書についても、一人あたりの二酸化炭素の排出量が少ないことを理由に、消極的な立場をとっています。
これからインドの工業が発展すると、ますます大量の二酸化炭素が排出され、地球規模の環境問題をもたらす恐れがあります。
インドの環境問題は、国際的な問題なのです。

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インドでは、農業も重要な産業です。
12億いる人口の約6割を農家が占め、国内総生産でも約1/4を占めます。
インドでは人口爆発が続いているため、農作物の生産量を増加させる必要があります。
しかしながら、インドでは農作物を生産するために必要な水が慢性的に不足しています。
このため、そのうち自国の人口を賄えなくなる恐れがあります。

「あたしは雨水が大切だと思います」

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インドは、経済自由化政策によってIT産業などは成長しましたが、綿花などの農業は逆に打撃を受けました。
まず、アメリカのモンサント社が特許権を持つ遺伝子組み換え綿花種子が、インドの綿花種子市場を独占しました。
モンサント社が特許権を持つ遺伝子組み換え綿花の種子は伝統的に用いられていた綿花の種子よりも高額なため、農家は借金をして種子を購入することになります。
ところが、貿易の自由化により綿花の価格は下落し、しかも、慢性的な水不足にあえぐインドでは遺伝子組み換え綿花が育ちにくく、しばしば凶作になってしまうのです。
この結果、借金を返せないことを苦に自殺する農家が後を絶たず、社会問題になっています。

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このようにモンサント社が種子市場が独占することによって農業が破壊されることは、インドネシアなど他の国でも報告されています。
日本が『環太平洋経済協定(TPP)』に加盟すると、モンサント社が日本の種子市場を独占すると予測されますから、対岸の火事ではありません。

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「私の大切なものは花です」

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インドの女性の立場は非常に弱いです。
インドで多数を占めるヒンドゥー教では、女性は元々けがれた存在であると考えられています。
また、葬式などの家庭内の祭事は長男が行なうので、女性にとっての使命は男の子を産むことです。
このため、男の子が産まれるまでは妊娠と出産を繰り返します。
インドの人口爆発が止まらないのはこうした背景があります。


「わたしは子供を産みたいです」

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インドは妊産婦が最も多く死亡している国です。
インドの女性の約80%は貧血なため、出産時の出血によって高い確率で死亡してしまいます。
インド政府は、2005年から、地方で出産前と出産時の無料ケア、入院サービスなどを提供して対応しています。
しかしながら、NGOヒューマン・ライツ・ウォッチは、医療ミスが繰り返し発生するにもかかわらず、その原因を究明しないなどの問題があることを指摘しています。

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「ぼくの大切なものは手です」

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インドでは、児童労働も大きな問題です。
国際労働機関(ILO)の調査によると、14歳以下で働く子どもは世界に2億5千万人いますが、そのうちの1億人がインドにいます。
子どもたちの労働の形態は、借金の返済のために働かされている債務労働や、工場での労働、路上での靴磨き、住み込みの家事労働などさまざまです。
そして、児童労働をしている子どものほとんどが低カースト出身です。

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インドでは綿花が盛んに生産されていますが、綿花農場では、子どもに対する搾取や虐待、多量の農薬を散布したことによる人体障害などの深刻な問題が報告されています。
綿花農場で働く子どもの7〜8割が女の子です。
その裏側には、女の子は、結婚するためにダウリーという持参金を用意する必要があり、もしダウリーが足りないと迫害を受けたり殺害されることもあるという事情があります。
そこで、NGO・ACEは、農村部にいる子どもを労働から解放し、教育が受けられるよう促す活動をしています。

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ダウリーの額は、相手のカーストにもよりますが、「女の子が3人生まれると一家は破産する」と言われるほど高額です。
インドでは、ダウリーを用意できない親が女の子を堕胎したり、嬰児のうちに殺害することが横行しており、男女比がアンバランスになっています。
インド政府はダウリーを禁止する法律を制定していますが、あまり効果は出ていません。

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「わたしは踊りが好きです」

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インドでは性的搾取を目的とした人身売買も横行しており、毎年約2万人の女性が売買されているといわれています。
インド国内では南部を中心に、国外ではネパールやバングラデシュから、デリーやムンバイなどの大都市に売られています。
こうした被害にあう女性のほとんどがダリット(不可触民)などの低カースト出身です。
ブローカーから「いい仕事がある」とだまされ、売春宿に売られてしまうのです。

そこで、NPO法人ラリグラス・ジャパンは、現地NGOと協力し、売春宿に売られた少女を救出、保護する活動をしています。

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「あたしの大切なものは家族の絆です」

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インドでは、エイズも蔓延しています。
その主な感染経路は、予防策をとらない異性間の性交渉です。
農村部から都市部に出稼ぎに来ている人が売春宿に通ってHIVに感染すると、それが農村部にいる妻にも移り、さらに、母子感染まで引き起こすなど連鎖的に広がっています。
いま、インドは240万人ものエイズ患者を抱え、南アフリカ共和国を抜いて世界で最も多くのエイズ患者を抱える国になってしまいました。

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インドの企業は、欧米の製薬会社が特許権を持つ抗HIV薬をコピーし、安価なジェネリック薬として製造しています。
世界エイズ・結核・マラリア対策基金(世界基金)は、このジェネリック薬をアフリカなどの貧しい国の主要都市の公立病院で無償提供しており、また、インドでもHIV感染者の約1割がこのジェネリック薬による治療を受けています。

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世界基金など、主要な国際機関が購入して発展途上国で使用する抗HIV薬の約80%がインドで製造されたジェネリック薬です。
ジェネリック薬が製造されて発展途上国で使用されると、欧米の企業は抗HIV薬の開発費用を回収することができません。
このため、EUは、ジェネリック薬がインドから発展途上国に出回らないよう、インド政府に対して圧力をかけています。
一方、国際NGO国境なき医師団は、貧しい人々に安く薬を届けたいという人道的な理由によりジェネリック薬の使用を支持しています。
開発者のインセンティブ(知的財産権の保護による新薬の研究開発の奨励)を確保するか、人道的な理由による特許権無視の特例を認めるか、意見が分かれるところです。

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「私の大切なものは家です」

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ムンバイやデリーのような都市には高層ビルが建ち並んでいます。
しかし、道路を一つ渡るとそこには巨大なスラムがひろがっています。
特に、ムンバイのスラムは巨大で、1600万人の人口のうち約75%がスラムに住んでいると言われています。
スラムでは、電気や水道などのインフラは不十分で、不衛生で、住人のほとんどは低カースト出身です。

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このスラムは非常に多くの問題を抱えています。
まず、不衛生なためポリオ(小児麻痺)やハンセン病(らい病)などの感染症が蔓延しています。
じつは、インドはポリオ患者とハンセン病患者が世界一多い国なのです。
さらに、スラムに住む子どもたちの多くが低体重です。
インドは、低体重の子どもの数も世界一です。
また、スラムに住むほとんどの子どもが出生登録されていないため、教育などの公共サービスを受けることができません。

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そこで、国連児童基金(UNICEF)は、現地NGOと協力して、適切な施設での出産・出生登録の推進・出生証明書を発行したり、子どもに対して栄養を補給したり、子どもに予防接種を実施したり、夜間学校を開設するなど、スラムの住環境を改善する活動を続けています。

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「私は家族のことが大好きです」

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インドにはスラムにすら住めないホームレスやストリートチルドレンもたくさんいます。
インドは、ストリートチルドレンの数も世界1位なのです。
ストリートチルドレンのほとんどは低カーストの出身です。
ストリートチルドレンたちは家族に見放され、暴力や搾取、麻薬中毒、人身売買などの危険にさらされ、その様子はイギリス映画『スラムドッグ$ミリオネア』でも映し出されています。

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インドにはこのようなストリートチルドレンを保護するため孤児院が多数あります。
また、インド政府、国連児童基金(UNICEF)、現地NGOなどが協力し、約50の都市で支援を要する子どもたちのための24時間無料の緊急電話サービスを実施しています。

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インドは経済成長を続けていますが、国民のほとんどは貧しいままです。

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しかし、インドにはこのような貧しい人たちに寄り添おうとする人が多数います。
マザー・テレサもその一人でした。
マザー・テレサは、最も貧しい人たちのために働こうと決意し、カルカッタ(現コルカタ)の当時世界最大と言われたスラムに、ホスピス、ハンセン病(らい病)患者の施設、ストリートチルドレンのための孤児院や学校などの施設を開設しました。
マザー・テレサの活動は、以後、インド全土、さらに世界中に広がりました。
こうした活動が認められ、マザー・テレサは1979年にノーベル平和賞を受賞しました。

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そのマザー・テレサはこんな言葉を残しています。
「愛情の反対は憎しみではなく、無関心」

マザー・テレサの施設には、世界中からボランティアが集まり、貧しくて困っている人に寄り添おうとしています。
そんな人たちの輪に加わりませんか?

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絵と写真を集めた人:
石井洋子、山本敏晴

画像データを編集し、文章を書いた人:
矢野弘明

編集完了日:
2011年10月10日

監修・校正:
山本敏晴

企画・製作:
NPO法人・宇宙船地球号
http://www.ets-org.jp/

人物が写っていない画像は、
以下のフリー素材会社から提供を受けたものもあります。
(株)データクラフト「素材辞典」
http://www.sozaijiten.com/

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