
ボリビア・・・といえば!
と、この国に対して何か思い付くことはどのくらいあるでしょうか?
南米5番目の面積を持ちながら、周りをブラジル、ペルー、チリ、アルゼンチンなどの
国に囲まれる内陸国です。
国土の3分の1を6000m級のアンデス山脈が占めますが、
一方で国の東側には手付かずのジャングルも多く残っています。

多民族・複合文化の国であり、大まかに先住民(インディヘナ)55%、
混血(メスティソ)32%、欧州系13%とされ、
南米の中でも先住民の割合が多い国です。
さらに先住民の中には多くの少数民族が含まれています。
国の正式名称はまさにその体を現し「ボリビア多民族国家」といいます。
因みに「ボリビア」は国名は独立運動を指導したシモン・ボリーバルに由来し、
また、首都スクレ(※)は初代大統領アントニオ・ホセ・デ・スクレに由来しています。
その他、ボリビアに因んだ人名由来の地名が多く存在しています。
※スクレは憲法上の首都ですが、実際の首都機能はラパスにあります。
【あなたの大切なものはなんですか?】
美しい田舎の風景です


ボリビアはアンデス山脈、ティティカカ湖、渓谷地帯、アマゾンなど
自然豊かな国です。


ボリビアでは、森林破壊・ゴミ問題・水質汚染などの環境問題があり、
悪化の一途を辿っています。


これらの問題は環境のみならず人々の健康にも大きな影響を与えています。
飲料水供給率は、全国71.7%
(都市部86.5%、地方部51.4%。2004年、ボリビア社会経済政策分析局)
となっており、安全な水を手に入れられない人々が多くいます。

日本の途上国への支援である政府開発援助では
1990年から2015年の間に安全な飲料水を継続的に利用できない人々の割合を
半減するための事業など環境問題に対する事業展開をしています。
【あなたの大切なものはなんですか?】
学校です


2001年時点の調査では、全国で約14%、
農村部では約26%の人が非識字者でした。
しかし、2006年からの約3年間にわたる識字教育の展開によって、
2008年12月20日、南米では2番目に『非識字からの解放』を宣言しています。
合言葉「アンデスから始めよう」のもと、原住民たちの多くがこの教育を
受けることになりました。

このプログラムは識字教育を行う国際機関となっているUNESCO
(国際連合教育科学文化機関)の他、
先に非識字を達成した同じ南米のベネズエラから多くの支援を受けて
実現されました。
【あなたの大切なものはなんですか?】
家族が一緒にいること


ボリビアの人口は約1000万人ですが、その中で海外へ出稼ぎに行く人口は
100万人を超えています。
人口の約1割以上が出稼ぎをしているのです。
主な行き先は隣国のアルゼンチン、ペルー、チリ、
そして旧宗主国であるスペインです。

家族が仮に4人だったとして、実に2つに1つの家族の両親のどちらかが
海外へ出稼ぎに行っている計算となります。
また、海外への出稼ぎの他、国内の農村部から都市部への出稼ぎも
多く行われていることを踏まえると、
家族みんながそろって暮らすことさえ当たり前ではないのです。
【あなたの大切なものはなんですか?】
畑です


ボリビアは鉱業・農業の国です。
アンデスではジャガイモ・とうもろこしを古くから生産し、
近年は換金性の高い大豆、サトウキビ、綿花、コーヒー、バナナが
盛んに生産されています。
ただし、大規模な農場を保持している人々はごく少数で、
多くは零細小農業に留まっています。

ボリビアは南米の中で最も貧しく貧富の格差も大きい国です。
国民の60%が貧困層に属しており、農村部ではより多くの割合となっています。
【あなたの大切なものはなんですか?】
ボリビアが一つになることです


ボリビアの歴史
ボリビアはこれまでどのような道を辿ってきたのでしょうか。
アンデス山脈といえばインカ帝国のイメージがありますが、
その成立は以外に新しく13世紀です。
そのインカ帝国も1532年にスペイン人に征服され植民地となります。
現在のボリビア南部で発見されたポトシ銀山により、
1650年にはポトシは人口16万人を抱える新大陸最大の都市となりました。

しかし都市の繁栄とは逆に、原住民は鉱山での過酷な労働やヨーロッパからの
疫病のためその人口は激減しました。
19世紀に入ると、南米の各植民地での独立運動に影響され
ボリビアでも過酷な鉱山労働に耐えかねた原住民や
「クリオーリョ」と呼ばれる現地生まれのスペイン人たちの間で反乱が起こります。
1825年、シモン・ボリバルの援軍を受けたスクレ将軍によって、独立を果たします。
これをボリビアでは「独立戦争」と呼んでいます。
【あなたの大切なものはなんですか?】
失った海です。ぼくは海がほしい。


ボリビアの領土は独立当事、現在の倍以上ありました。
そして、西部には現在はない海岸線の領地を有していました。
内陸国ではなかったのです。
今の国土は、20世紀初頭に起こった3つの戦争の結果です。
まずチリとの太平洋戦争(1879年〜83年)に敗れ、海を失いました。
その後、1903年にはアマゾンのアクレ地区をブラジルに割譲し、
1932年〜35年のチャコ戦争では南東部のチャコ地方の大部分を
パラグアイに割譲しました。
海は食料を含む多くの資源だけでなく、各国との交通においても
大きな役割を果たしえます。

ボリビアでは政治的にだけでなく一般の人々の間で
「失った」海への憧れを抱く人々が多いのです。
さて、数々の戦争を経たボリビアは政治・経済が安定せず
国民の不満は募っていきます。
鉱山労働者、民族主義グループなどの支持を得た新しい政党が
1952年、伝統的な支配層を打破し政権を握ります。
彼らは社会主義的政策を大々的に行い成果を挙げました。
これらの社会の動きは「ボリビア革命」と呼ばれています。
革命を経験したものの、
一時は軍事政権による支配が20年以上も続くこともありました。
現在は文民による政治が行われています。
【あなたの大切なものはなんですか?】
安心な社会です


ボリビアの現在の情勢
2006年に南米で初めての先住民出身のエボ・モラレス大統領が誕生しました。
その基本路線は、先進国による政治的支配・経済的な搾取の打破や、
自由競争を促進し、政府の経済への介入を極小化する
いわゆる「新自由主義的経済」への対抗姿勢です。
虐げられてきた先住民の権利拡大などを指向した社会主義的な改革を
行おうとしています。
しかし、既得権を守ろうとする欧米系の移住者と激しく対立して、
社会不安を引き起こしています。
問題は山積みですが、ボリビアには他国にはない強みもあります。
ボリビアの資源
ボリビアはその貧しさからは想像できないほど豊かな天然資源が眠っている国として知られています。
「天空の鏡」と称されるウユニ塩湖はその美しさから日本でも有名となりましたが、
実はレアメタルである「リチウム」の宝庫でもあります。

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リチウムは私たちの身近なものでは「電池」に使用されています。
その他水素爆弾など必ずしも平和的でないことにも利用されています。
現在先進各国が挙ってその権益獲得に乗り出しています。
日本もその中の一国です。
この開発がお金と引き換えに「天空の鏡」を
破壊するようなものでないことを住民も願っています。
開発においては長期的な視点で環境、そして観光資源としても
目を向けて計画を立てていかなければなりません。
【あなたの大切なものはなんですか?】
ボリビアの国旗です


ボリビアの国旗は1851年に制定されました。
赤、黄、緑の三色旗で、中心にある紋章のコンドルは希望を象徴しています。
赤は独立戦争で流れた血、黄は豊かな鉱物資源、緑は森林資源を表します。
【あなたの大切なものはなんですか?】
お母さんが見に来てくれるサッカー


ボリビアは南米だからサッカーが強いのか!
と思ったらそうでもないのです。
FIFAランク64位、ワールドカップに出場経験はあるものの、
今は昔の話となっています。
しかし、ボリビアでは群を抜いて人気のあるスポーツであることに変わりありません。
多くの子どもたちはサッカー選手になることを夢見ています。
貧困から抜け出せる、といった理由もありそうではありますが、
実際は純粋な将来の夢なのです。
【あなたの大切なものはなんですか?】
私の夢です


どんな子どもたちでも夢を無心に追いかけられる、
そんな社会になることをボリビアは目指しています。
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絵と写真を集めた人:
青年海外協力隊・阿部 かなえ(2008年)
青年海外協力隊・工藤 敦子(2009年)
画像データを編集し、文章を書いた人:
佐渡 愛子
編集完了日:
2011年9月6日
監修・校正:
山本敏晴
企画・製作:
NPO法人・宇宙船地球号
http://www.ets-org.jp/
人物が写っていない画像は、
以下のフリー素材会社から提供を受けたものもあります。
(株)データクラフト「素材辞典」
http://www.sozaijiten.com/