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ボツワナはアフリカの南部(その中でも内陸部)にある国です。
国土は日本の約1.5倍ですが、人口は195万人しか住んでいません。
そのため、世界で7番目に人口密度の少ない国として知られています。
ボツワナ人の約79パーセントがツワナ族という民族で、その他にもカランガ族、バサルク族などの民族で構成されています。
公用語はツワナ語(約78パーセント)と英語(約2パーセント)です。
ボツワナは、複数の政党によって民主主義に基づく政治を目指しています。そのため、他のアフリカ諸国に比べると、国全体が比較的安定している国でもあります。
また、ダイヤモンド鉱脈の発見で経済が発展し、今では「中所得層」に分類され、「アフリカの優等生」とも呼ばれています。
一方で、古くからの伝統文化や家族との関係も大切にしています。
また、いまだ多くの自然が残っています。
しかし、同時に、ボツワナには多くの問題があります。
1)失業率が高く貧困層が多いこと(ジニ係数)、2)ダイヤモンド産業への依存が高いこと、3)HIVの感染率が高いことなどがあげられます。
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ボツワナの人たちが描いた、大切なものの絵を紹介します。
「あなたの大切なものはなんですか?」
「わたしの大切なものは鳥です」
Thatayotlhe Midas Maezeさん 29歳
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Thatayotlheさんは、
「鳥は美しく、私の国の観光地であるオカバンゴ・デルタ(地域の名前)でよく見られるので、私にとって鳥が大切です。鳥は、私の国が発展するための収入源になります。」
と言いました。
観光産業は、ボツワナの主要産業の第2位となっています。
そのため、観光産業を生活を支えにしている人が多くいます。
そして、その観光産業がボツワナの大自然なのです。
国土の約17%が、指定保護区とされていて、国立公園には多くの動植物が生息しています。
チョベ国立公園ゾウの生息密度は世界一だとも言われています。
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太陽光によるクリーンエネルギー
ボツワナは、電力供給の75パーセント以上を近隣諸国からの輸入に頼っています。
そのため、ボツワナ国内でエネルギーの自給率を上げることが大きな課題となっています。
また、エネルギーの自供率を上げるだけでなく、CO2削減を目指しているので、太陽光発電などといった再生可能エネルギーを取り入れようとしています。
太陽光発電の導入のために、日本のODA(政府開発援助)で無償の支援を行っています。
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「わたしの大切なものは牛です」
Onkababile Ketlogetsweさん 21歳
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Onkababileさんは、
「学費を払うためにお金が必要になるなどの問題があるとき、牛を売ってお金を得ます。また、牛のミルクは、子どもに飲ませたり、食べ物を作るために使います。」
と言いました。
ボツワナでは、昔から牛を財産とみなし、生活の重要な糧として、大切に扱ってきました。
また、人々は牛だけではなく、伝統的な家やつぼなども大切にしています。
経済を発展させようとする一方で、古くからの文化が受け継がれていることがわかります。

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サン族
ボツワナには「サン族」という先住民族が住んでいます。
サン族は、文字を持たないため、古い記録は残っていません。
また、サン族は狩猟採集民族で、村というものがなく、家族単位で生活しています。
彼らは、自然に関する知識が豊富で、厳しい生活環境の中でもたくましく生きてきました。
近年、ボツワナ政府はサン族にも近代的な生活を送らせようと、政府が建てた家に強制的に住まわせるなどといった政策をとっています。
これに対し、人権団体や、文化人類学者の間では、人権侵害や文化の否定であると批判の声があがっています。
近代化し、豊かに暮らすということだけが、人間にとって重要なのでしょうか。
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「私の大切なものは車です。」
ケツェピーレ・ディカカーニョさん 20歳
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ケツェピーレさんは、
「移動手段として、車はとても大切だと思います。」
と言いました。
さて、みなさんは、「ジニ係数」という言葉を知っていますか?
ジニ係数とは、社会の所得分配の不平等さを測る指標のことです。
数の範囲は0から1で、値が0に近いほど格差が少ないことを表し、1に近いほど格差が大きいということを意味します。
ボツワナのジニ係数は0,605で、世界で5番目に悪いのです。
また、1995年〜2005年のUNDPによる調査によると、1日1ドル以下で生活をする人の割合が28パーセントで、世界で8番目に多いことがわかりました。
所得格差の問題はボツワナの抱える最大の問題の一つとして挙げられます。
そうした問題解決のために、2009年にボツワナでアフリカ開発会議が開かれました。
アフリカや他の国の総勢48の国の政府代表が集まりました。
そして、貧困層の70%が農村で暮していることから、農業研究や土壌の改善、小規模農家への支援を行い、農産物や食糧を増やしていく必要があるということになりました。
貧困層の人々の飢餓の問題が深刻化している中で、国連と企業が協力して取り組んでいるのが、たんぱく質を豊富に含んでいる「スピルリナ」という藻の生産と普及です。
コストが安く、生産性も高いため、貧困層のたんぱく質不足の問題を解決することと同時に、現地の雇用も生み出していくという、2つの貧困解決のための狙いもあります。
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ダイヤモンド鉱山
ボツワナの主要産業の第二位は観光業でしたが、第一位はダイヤモンドです。
ボツワナは、1967年に世界最大級のダイヤモンド鉱脈が発見されてから、経済はダイヤモンドによって成り立っています。
国内には4つのダイヤモンド鉱山があり、GDPの約40パーセントを占めています。
ボツワナ国内からは多くのダイヤモンドが採れますが、原石の大半はイギリスへ送られ、イギリスで加工され、二次産品として世界中で出荷されます。
ここで問題になるのが、ボツワナは一次産品の出荷が中心なことです。
一次産品は二次産品よりもずっと低い値段で取引されます。
そのため、ダイヤモンド原石をそのまま輸出してしまうと、あまり利益を上げることはできません。
また、大半を原石のまま外国に輸出してしまうため、商品としてボツワナ国内に残らないのです。
ボツワナはダイヤモンドのおかげで、豊かになりました。しかし、最近の金融危機の影響で、ダイヤモンドを購入する人が急減してしまいました。
国のGDPの半数近くが一つの輸出産品で占めることはとても危険です。
そのため、ボツワナ政府は、長期的は経済開発を目標として、現在、観光産業にも力を入れています。
ダイヤモンド以外の新しい産業の成長の必要性を認識し、その道を模索しています。
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HIV/AIDSの問題
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ボツワナは世界で最もHIVの感染率の高い国の一つです。
HIVとは、AIDSを引き起こすウィルスで、母子感染、血液感染、性感染で人から人に感染していきます。
AIDSとは、HIVにより免疫力が低下し、さまざまな病気を引き起こします。
UNAIDS(国連合同エイズ計画)の2009年の報告によると、国全体でAIDSに感染している人は約32万人で、15歳から49歳の感染者は24.8パーセントとなっています。
親をAIDSで亡くした子ども(エイズ孤児)は、9万3000千人にものぼるといわれています。
そして、国全体では23.9パーセントと世界第二位です。(ちなみに一位はスワジランドです。)
ボツワナのAIDSの感染率が高い理由の大きな原因として、同時に複数の性的パートナーを持つ(Multi Concurrent Partner)ことが社会的に容認されていることがあります。
そのため、パートナーを特定の人に決めない人が多いのです。
UNAIDSは、ボツワナのAIDSの問題を深刻に受け止めて、AIDS撲滅に取り組んでいます。
まず、AIDSに感染した子どもたちに無償でウイルス治療を行っています。
子どもは大人よりも抗ウィルス治療を受けることが少ないのです。
また、女性の経済的自立を促しています。
女性の自立を促すことがどうして、AIDSに感染する割合を減らせるのかというと、貧しい女性は生きていくための手段として性交渉をする割合が高いのです。
そのため、AIDSの感染率を減らすためには、ジェンダー(女性の権利の向上)の問題も考えていかなくてはなりません。
その他にも、保健医療制度の強化などを行っています。
以上あげたとおり、ボツワナは国内に多くの問題を抱えています。
政府はこれらの問題解決、そして、様々な新しい社会事業に力を入れています。
しかし、かえってそれが人々の政府への依存を大きくし、しばしば人々の労働意欲の低下にもつながっています。
ボツワナには手付かずの大自然や、多くの資源、そして伝統的な文化が多くあります。
そして、ボツワナの人々はそれらをとても大切に思っています。
その大切なものをどう守っていくかということが課題になると思います。
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絵と写真を集めた人:
青年海外協力隊・平野 祐介
(2011年5月)
画像データを編集し、文章を書いた人:
三雲千穂
編集完了日:
2011年6月24日
監修・校正:
山本敏晴
企画・製作:
NPO法人・宇宙船地球号
http://www.ets-org.jp/